【ワシントン、エルサレム時事】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、オンラインで記者会見し、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの北部で、イスラエルが1日4時間の戦闘休止を開始すると発表した。北部から南部への退避経路も新たに開き、戦闘地域からの住民退避を拡大する。
 カービー氏は決定を「正しい方向への良い一歩だ」と歓迎した。戦闘休止を巡っては、米イスラエル間で首脳同士も含めて議論。バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との6日の電話会談で「戦術的な戦闘休止の可能性」を協議していた。
 バイデン氏は9日、記者団に対し、「望んだよりも時間がかかった」と語った。人質解放交渉に関しては「楽観している」と述べ、「奪還するまで取り組みを続ける」と強調した。
 米側の説明では、イスラエルはガザ北部から南部への退避経路として、二つの人道回廊を設置。一つは既に開通し、ここ数日の間、1日4~5時間使用された。新たな経路は地中海沿岸の道路が使われる。カービー氏は、戦闘休止によって住民の退避やハマスが拘束する人質の解放、人道支援が可能になると強調。イスラエルは休止中に軍事作戦を行わない方針を米国に説明した。
 ネタニヤフ氏は9日放映のFOXテレビとのインタビューで、人道回廊の設置で合意したことを明らかにした上で、「戦闘地域からの市民の安全な退避を促したい」と説明。「ガザを占領するつもりはない」と述べつつ、「人質の解放なしに停戦はない」と改めて強調し、ハマス排除へ向け攻撃を続ける考えを示した。
 イスラエルのガラント国防相は9日、ハマスが地下に司令部を設けているとされるガザ市最大のシファ病院近くにイスラエル軍の地上部隊が迫っているとして、「テロリストは恐怖で震えているだろう」と主張。イスラエル軍報道官も同日、司令官ら戦闘員50人以上を殺害し、大量の武器を押収したと戦果を誇示した。 
〔写真説明〕9日、パレスチナ自治区ガザ北部から南部に退避する住民ら(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)