【エルサレム時事】イスラエル軍が地上侵攻したパレスチナ自治区ガザの最大都市ガザ市では10日、多数の避難民らが身を寄せている複数の病院への攻撃が相次いだ。イスラエル側は、病院の地下にはガザを実効支配するイスラム組織ハマスの司令部があると主張し、病院を包囲して攻勢を強めている。一方、イスラエル軍は11日、SNSで「病院への攻撃はしておらず、包囲もしていない」とする動画を公表した。国際社会の批判をかわす狙いとみられる。
 イスラエル人権団体の11日の発表によれば、電気や酸素の不足が影響して新生児2人が死亡し、37人の命が危険な状態に陥った。学校も空爆され数十人の死亡が伝えられるなど、市民の犠牲が一段と拡大している。
 ガザ市最大規模のシファ病院では10日、敷地内が被弾。病院当局者はロイター通信に「イスラエルは病院に対し戦争を仕掛けている」と糾弾した。イスラエル軍報道官は10日、シファ病院には「テロ組織がガザから発射した飛翔(ひしょう)体が誤って落ちた」とSNSを通じ説明。近くで活動していたイスラエル軍が標的だったとして、イスラエルによる攻撃との見方を否定した。
 イスラエル軍は11日、学校への空爆でハマスの司令官を殺害したと公表。この司令官が「南部へ退避を望む住民約1000人を病院で人質とし、配下のテロリストと一緒に学校に隠れていた」と主張した。
 ただ、病院など民間施設周辺での市街戦が激しさを増すにつれて、国際社会からは懸念の声が強まっている。
 ブリンケン米国務長官は10日、訪問先のインドで「あまりに多くのパレスチナ人が犠牲になった」と指摘。フランスのマクロン大統領は英BBC放送のインタビューで「赤ん坊や女性、高齢者が理由も正当性もなく命を落としている」と述べ、イスラエルに停戦を呼び掛けた。これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は声明で「世界の指導者はイスラエルではなく、ハマスを非難すべきだ」と反論した。
 米政府は9日、イスラエル軍がガザで1日4時間の戦闘休止を始めると表明。イスラエル軍は11日、X(旧ツイッター)で、ガザ北部ジャバリヤ難民キャンプ周辺で午前10時から午後2時(日本時間午後5時から同9時)まで「軍事行動を戦術的に休止する」と発表し、激戦地の北部から南部への退避を改めて住民に促した。国連によると、10日は約3万人が南部へと避難。10月7日の戦闘開始以降、ガザで家を追われた人は約160万人に上る。
 ガザ保健当局の10日までの集計では、ガザでの死者は子供4500人以上を含む1万1078人。イスラエル側では約1200人が死亡した。 
〔写真説明〕避難民が身を寄せるパレスチナ自治区ガザのシファ病院=8日、ガザ市(ロイター時事)
〔写真説明〕10日、パレスチナ自治区ガザの北部から南部に退避する人々(ロイター時事)

(ニュース提供元:時事通信社)