【エルサレム時事】イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザを地上侵攻したイスラエル軍は13日、地下にハマスの司令部があると主張するガザ市最大規模のシファ病院の周辺などでハマスとの交戦を続けた。激戦が続くガザ北部では複数の病院がイスラエル軍に包囲されているとみられ、AFP通信によると、ガザ保健当局者は13日、ガザ北部で全ての病院が「稼働停止」の状態になったと主張。深刻な人道危機の悪化に拍車が掛かる恐れがある。
 シファ病院の院長は中東の衛星テレビ局アルジャジーラに対し、電気や水が不足しているほか、人工透析の機材、酸素供給装置も攻撃などで壊れて機能していないとして、「もはや病院ではない」と訴えた。当局者によれば、シファ病院では未熟児7人と集中治療室の患者27人が既に死亡したという。
 パレスチナ赤新月社は13日、ガザ北部アルクッズ病院が爆撃にさらされ、患者らは水も食料もなく取り残されているとX(旧ツイッター)に投稿した。イスラエル軍は同日、「アルクッズ病院の入り口から民間人に紛れたテロリストに発砲され、銃撃戦で21人を殺害した。発砲後に病院へ隠れたテロリストもいた」として、病院近くでの戦闘を正当化した。
 イスラエルのネタニヤフ首相は12日、米テレビのインタビューで「シファ病院の稼働に必要な燃料の供給を提案したが、ハマスが拒否した」と説明。しかし、ロイター通信によれば、ハマスはこれを否定した上で、イスラエルが申し出た燃料300リットルでは「(病院の)発電機を30分間回すのにも足りない量だ」と批判した。
 イスラエル軍は13日、ガザ北部シャティ難民キャンプ周辺での作戦で、モスク(イスラム礼拝所)の一角で保管されていた爆発物を発見したと発表。「ハマスのテロ拠点は意図的に民間施設内に設置されている」と改めて非難した。ハマスがガザに連れ去った人質の一部を拘束しているとみられる武装組織「イスラム聖戦」幹部の自宅も捜索した。
 ガザの南部でも、イスラエル軍の空爆が激化しているもようだ。アルジャジーラによると、南部ハンユニスでは12日から13日にかけて住宅地が攻撃を受け、30人以上が死亡。巻き込まれた建物にはガザ北部から逃れてきた避難民らが身を寄せていたという。 
〔写真説明〕12日、パレスチナ自治区ガザの病院で、停電の中、携帯電話のライトを頼りに治療に当たる医師ら(SNSの映像より)(ロイター時事)
〔写真説明〕13日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスの病院で、イスラエル軍の空爆を受けた建物から運ばれた子供を診察する医師(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)