ドアの外にオレンジの炎。つながらないインターホン。羽田空港で起きた日本航空と海上保安庁の航空機の衝突事故では、日航機の乗客乗員に死者はいなかった。日航は3日、乗客らの脱出状況を説明し、危機一髪の瞬間が明らかになった。
 同社の乗員への聞き取りによると、日航機は2日午後5時47分ごろ、羽田空港のC滑走路に着地。パイロットが窓の外に「違和感」を覚えた直後、強い衝撃が同機を襲った。
 機体は約1キロ滑走して停止。「落ち着いてください」。乗客の動揺を抑えようと客室乗務員(CA)らが大声で叫ぶ。窓からは左エンジンが火を噴く様子が見え、室内に煙が入り始めた。
 同機は8カ所にドアがあったが、CAは5カ所から炎が見えたため使用を断念。最前列の左右と、最後尾左側の計3カ所から脱出を決めた。
 事故直後から機内放送やインターホンが使用不能になり、最後尾のCAは機長らの指示を受け取れなくなった。だが、落ち着いて自身で状況判断し、脱出用のシューターを展開したという。
 機長は操縦席を出ると、逃げ遅れがいないか確認しながら客室後部に移動。途中で数人の乗客を見つけ、避難を促した。最後に機長が脱出したのは午後6時5分で、事故発生の約18分後だった。
 記者会見した堤正行・安全推進本部長は、乗員が年1回、さまざまな状況を想定した脱出訓練を実施していると説明。機長と連絡が取れないケースも含まれており、「日々ケーススタディーをしてきた。その成果が出たと評価している」と語った。 
〔写真説明〕日本航空機の機内から撮影された炎が上がるエンジン付近=2日午後、東京・羽田空港(乗客提供)

(ニュース提供元:時事通信社)