能登半島地震で多数の家屋が倒壊するなどした石川県は、発生55時間後の3日深夜から、安否が分からない人の氏名などを公表している。市民から寄せられる情報で要救助者を絞り込み、効率的に捜索するためだ。県によると、実際に本人らが名乗り出るケースが多数あるといい、専門家は「安否不明者の公表はためらわずやるべきだ」と話している。
 災害時の氏名公表を巡っては、2018年の西日本豪雨や21年の静岡県熱海市の土石流災害などで、氏名公表が安否確認につながった例があった。ただ、実名を出すかや家族の同意を得るかなど、自治体ごとに判断が割れており、内閣府は23年3月に指針を作成。「家族の同意なく速やかに安否不明者の公表を行うべきだ」とした。
 これを受け石川県も同年5月、災害時の氏名公表基準を改定し、発災48時間後をめどに家族の同意なく安否不明者の氏名を原則公表するとした。
 今回の地震では各自治体などから情報を集めて、氏名や住所、性別、年齢をホームページに掲載。名字だけといった情報でも公表しており、これまでに本人らの申し出により多数の安否が確認された。県の担当者は、不明者の絞り込みに直接役立ったかは「分からない」とするが、「家族に許可を取る作業がなく負担は減った」と話す。
 一方、犠牲者の氏名については「家族の同意を得てから」としており、現時点では公表していない。静岡大の牛山素行教授(災害情報学)は「亡くなられたことも重要な情報。安否不明者と同様に速やかに公表するべきでは」と指摘する。
 公表が遅れれば、自治体に安否の問い合わせが来て職員の作業を増やしたり、不確かな情報が出回ったりする懸念がある。ただ、いまのところは法的根拠や国の指針がないのが実態で「自治体も萎縮しているのでは」と話している。 

(ニュース提供元:時事通信社)