能登半島地震で被災した2次避難者を巡り、2月末から3月末までとされている滞在期限をどうするか、受け入れ側のホテルや旅館が対応に苦慮している。3月16日に北陸新幹線が金沢から福井県の敦賀まで延伸し、多くの宿泊予約が見込まれるからだ。一方で、新たな避難先を見つけるのは容易でなく、被災者の間に不安が広がっている。
 石川県は学校など1次避難所での災害関連死を防ぐため、2次避難を推進しており、金沢市以南の宿泊施設に16日時点で5200人余りが滞在する。県は2月から今後の行き先について各地で説明会や相談会を始めた。
 「3月上旬が利用期限」。加賀市の山代温泉街にある旅館「みやびの宿 加賀百万石」で7日に開かれた説明会で、県側はこう切り出した。避難者約330人の行き先として応急仮設住宅のほか、民間の物件を借り上げる「みなし仮設」や公営住宅、修理後の自宅といった選択肢を示した。
 輪島市から同旅館に避難した小橋敏雄さん(80)は「帰るにも道が寸断していて帰れないし、仮設住宅は埋まってきている」と今後の住まいへの不安を隠さない。
 小松市の旅館に母親と避難した建築業椿原政幸さん(47)=輪島市=は「動いてと言われたら動かざるを得ない」としつつ、「仮設住宅に入れる時期が分からないし、遠くのアパートでは通勤が大変」と頭を抱える。
 多くの宿泊施設が受け入れ期限を2~3月とするのは、北陸新幹線の延伸開業による観光需要が背景にある。地震による観光客減を挽回する機会でもあり、「加賀百万石」の吉田久彦社長(40)は「シフトチェンジが必要」と話す。
 ただ、仮設住宅の着工数は15日時点で2347戸。県は3月末までの着工目標を3000戸から4000戸に上方修正したが、申込数は7000戸を超え、追い付かないのが現状だ。
 こうした事態を受け、吉田社長は行き先が決まらない避難者には従業員寮を提供し、住まい探しに向け不動産会社を紹介するなどの対応を取る。別の県南部の旅館は「(避難者を)追い出す考えはどこもないと思う」としつつ、「行政の指示がないと動きにくい」とこぼした。 
〔写真説明〕2次避難者に説明する石川県の職員=7日午後、同県加賀市

(ニュース提供元:時事通信社)