【ニューデリー時事】インドと台湾が急接近している。戦略物資の半導体技術が欲しいインドと、同国を中国に代わるサプライチェーン(供給網)の移転先候補と位置付ける台湾側の思惑が一致。経済的な結び付きを強めている。
 「注目すべきは、台湾からの友人が参加してくれたことだ」。13日、インドで行われた半導体3工場のオンライン起工式でモディ首相はこう強調した。台湾の半導体受託製造大手、力晶積成電子製造(PSMC)が3工場のうち一つを技術支援しており、台湾外交部(外務省)の田中光・政務次長(副大臣)が式典にリモート出席した。
 PSMCはインド大手財閥タタ・グループの傘下企業と提携し、西部グジャラート州に「国内初」(地元メディア)となる半導体製造工場を整備。ウエハー換算で月5万枚の生産を見込む。
 IT産業に強みを持つインドは、製造業の集積を目指している。モディ政権は「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」政策を推進。一方の台湾は経済安全保障の観点から、中国に代わってインドや東南アジアとの関係強化を目指す「新南向政策」を掲げる。
 現在、インドには米アップル製品の生産を請け負う鴻海(ホンハイ)精密工業などの台湾企業228社が進出。日系企業の6分の1程度だが、高い技術力で存在感を高めている。
 台湾としては、少子高齢化で労働力が不足しているため、インドの労働者を受け入れたい思惑もあり、双方は2月に人材に関する覚書を締結した。人的交流も今後活発化しそうだ。
 印中関係に詳しいネール大のアルカ・アチャリャ教授によれば、両国は近年、国境紛争で関係が悪化し、中国企業の対インド投資が難しくなっている。このため、モディ氏が3期目を目指して臨む今春の総選挙の結果にかかわらず、今後5年間は「インドと台湾の経済関係は着実に拡大する」と予想する。
 ただ、台湾を「不可分の領土」と主張する中国は、「インドとの交流で、台湾がより多くのインド人から独立国として認知されることを警戒している」(同教授)と指摘。印中関係のさらなる悪化につながる可能性を示唆した。 
〔写真説明〕13日、インド各地などを結びオンラインで行われた半導体3工場の起工式で演説するモディ首相。台湾政府関係者も遠隔で出席した(インド政府報道情報局提供・時事)
〔写真説明〕取材に応じるインド・ネール大のアルカ・アチャリャ教授=21日、ニューデリー

(ニュース提供元:時事通信社)