能登半島地震で甚大な被害が出た石川県で、災害関連死の疑いがあるとして少なくとも43人の遺族が災害弔慰金の支給を申請したことが30日、自治体への取材で分かった。今後、県などが開く審査会で災害との因果関係が判断される。
 地震発生から4月1日で3カ月。過去の災害では、関連死と認定された人は被災後3カ月までに死亡した人が多くを占めるが、関連死に詳しい関西大の奥村与志弘教授(総合防災・減災)は「3カ月が経過した後も、環境の変化で高齢者を中心に増え続ける可能性がある」と警戒を呼び掛ける。
 県によると、地震の犠牲者は244人に上る。うち関連死の疑いがあるのは珠洲市、能登町で各6人、輪島市で3人の計15人。
 時事通信が県内全19市町に取材したところ、「関連死」の災害弔慰金申請者は3月27日時点で輪島市30人、能登町8人、志賀町4人、穴水町1人だった。県公表の15人が含まれるかは不明。
 穴水町は他に9人分の相談を受けている。珠洲、小松両市は「関連死の疑いの段階なので回答は控える」などとした。残り13市町は0人だが、大きな被害が出た七尾市には相談が相次いでいるという。
 珠洲市の端名哲士さん(59)は避難中に死亡した義母のかず子さん(87)について、市に「関連死」を申請した。心不全を患っていたかず子さんは津波から逃げるため知人の車に乗せてもらい高台に移動したが、直後に体調が急変したという。端名さんは「震災がなければ亡くなっていない」と話す。
 県は関連死を認定する審査会を市町と合同で開く予定だが、委員となる医師らの選任中で初会合のめどは立っていない。
 奥村教授によると、関連死の人数は最大避難者数と相関が見られるという。同教授は「過去の災害データに照らすと今回は20~30人と推定されるが、想定以上の発生率になっているのではないか」と語る。2次避難先や仮設住宅に移ってから亡くなる事例も今後出てくるとし、「行政やボランティアによる継続的な支援が必要だ」と訴えた。 

(ニュース提供元:時事通信社)