能登半島地震では8000人超の被災者が避難所などに今も身を寄せる。段ボールベッドが設けられるなど生活環境は改善したが、当初は体育館の床に雑魚寝する姿が見られた。災害のたびに繰り返されてきた光景はなぜ変わらないのか。避難所・避難生活学会常任理事を務める新潟大学の榛沢和彦特任教授(心臓血管外科)に聞いた。
 「20年前から全然変わっていない」。1月、石川県輪島市などを訪れた榛沢氏は、雑魚寝状態の避難所を見て落胆した。珠洲市や能登町では地震から2週間後に段ボールベッドが整備され始めたが、輪島市の一部では3月初旬でもベッドが設置されていない避難所があったという。
 榛沢氏は2004年の新潟県中越地震から災害後のエコノミークラス症候群の予防活動に携わり、避難所にトイレ・キッチン・ベッドを48時間以内に整えることを提唱している。「道路の寸断で物資の搬送が滞り、平時から備蓄をしていない問題点が今回の地震で露呈した」と語気を強める。
 国主導の災害対策を進めるイタリアを12年に視察した榛沢氏によると、同国では首相直轄の「市民保護局」が予算を確保し、被災者支援などに当たる。避難所には3日以内に家族ごとのテントと簡易ベッドが設けられ、トイレとシャワーが一体のコンテナが配備される。自治体は人口の約0.5%分を目安に備蓄するほか、被災者が避難所で死亡した場合などは運営者への罰則があるという。
 榛沢氏は、日本では市町村が避難所を管理することなどから、支援の質が自治体の体力に左右されると指摘する。「能登の被災地でも避難所環境はばらばらだった」と振り返り、首都直下地震や南海トラフ地震を念頭に「対策と支援を一元的に担う災害省庁をつくるなど抜本的に体制を変える必要がある」と警鐘を鳴らした。 
〔写真説明〕オンライン取材に応じる新潟大学の榛沢和彦特任教授=19日

(ニュース提供元:時事通信社)