【ベルリン時事】欧州で農家の抗議活動がやまず、各国が対応に苦慮している。欧州連合(EU)は、ロシアの侵攻を受けるウクライナ支援の一環で導入した同国産品の無関税措置などを、加盟国内からの反発を受けて相次いで見直した。6月の欧州議会選挙をにらみ、台頭するポピュリスト政党に農家票が流れるのを阻止する思惑もある。
 ポーランドで3月20日、ワルシャワやポズナニなど複数の都市につながる主要道路が、農家の抗議活動によってふさがれた。安価なウクライナ産品の流入に反対しており、参加者の1人は「いつまで赤字で生産しろというのか」とAFP通信に憤りを語った。こうした抗議は1年以上続いているが、抜本的な解決に至っていない。
 ウクライナは世界有数の穀倉地帯だが、ロシアは黒海を経由する主要輸出ルートを妨害。EUはポーランドなどを通る陸上輸送を後押ししてきたが、大量の流入は域内で混乱を招いた。さらに環境規制や補助金削減なども引き金となり、農家による抗議の波は、ドイツやフランス、イタリアなど欧州全体に広がった。
 そうした中でEU共通の通商、農業政策をまとめる欧州委員会は1月、鶏肉や砂糖など一部ウクライナ産品について、輸入量が直近数年間の平均水準を上回った場合に緊急輸入制限(セーフガード)を発動する案を加盟国に提案。3月には、環境に配慮した農業への移行を促す政策を後退させた。これらの軌道修正には、欧州議会選を控えて、農家票をつなぎとめたい各国主要政党の意向が反映されている。
 欧州農政に詳しいダブリン大学トリニティ・カレッジのアラン・マテュース名誉教授は「農家はこれまでは低い収入でも我慢していたようだが、気候変動などの面で悪者扱いされることが増えて意欲を失っている」とし、不満は容易に解消されないと指摘。欧州議会選では、農家支援と環境規制のバランスが争点の一つになると分析している。 

(ニュース提供元:時事通信社)