【ニューデリー時事】収監されているパキスタンのカーン元首相の演説動画を生成AI(人工知能)で制作したジブラン・イリヤス氏が時事通信のオンラインインタビューに応じた。イリヤス氏はパキスタン生まれで米国在住のサイバーセキュリティーの専門家。カーン氏が設立した野党パキスタン正義運動(PTI)のソーシャルメディア責任者を務める。主なやりとりは次の通り。
 ―動画作成の経緯は。
 PTIは当局から集会開催を禁じられたため、オンライン集会を開こうとした。オンライン集会でもカーン氏の過去の演説を流そうと考えたが、人々を奮い立たせるようなものではないと感じ、AIで合成した演説にしようと考えた。
 ―動画作成に要した時間や金額は。
 最初の4分超の動画作成に計約36時間かかった。AI音声ソフトウエア企業のイレブンラボ(米国)のサービスに99ドル(約1万5000円)を支払った。作成を担ったのは私を含め4人。この分野に詳しい医師が技術面で中心的役割を果たした。全員ボランティアだ。
 ―具体的な作成手順は。
 まずカーン氏の長い声のサンプルを探し、ソフトに取り込んだ。その上で読み上げるテキストを用意すると同氏の声が生成された。英語は比較的簡単だが、パキスタンのウルドゥー語は難しい。長いせりふを一度に作るとうまくいかない。複数の短いトラックを組み合わせて作った。
 演説内容は、刑務所でカーン氏がPTIの弁護士に渡したメモを基にしている。一言一句同じではない。
 ―国内外の反応や影響は。
 AI演説を聞いて多くの人が奮い立ち、党勢拡大に貢献した。PTIは総選挙に出る候補者さえ見つからないと言われていたが、過去最多の(無所属だが事実上PTIの)候補者が集まり、他の全ての党を破った。抑圧された人の声を届けることができ、AIが良いことにも使えると世界に示した。
 ―動画に対するカーン氏の反応は。
 世界中で報道されたことを喜び、「ソーシャルメディアのボランティアは素晴らしい」と話していた。 
〔写真説明〕パキスタンの野党パキスタン正義運動(PTI)のソーシャルメディア責任者ジブラン・イリヤス氏(本人提供・時事)

(ニュース提供元:時事通信社)