"I will rescue You"--Scenes from Hurricane Harvey(出典:Youtube)

今年5個目の非常に強い勢力を持つ台風24号(チャーミー)が、週末には沖縄・先島諸島付近へ向かっており、最接近する予想が出ている。

その後、来週は本州付近に影響が出る可能性が出てきた。本州付近には秋雨前線が停滞し、活動が活発になるため、暴風や大雨、高波、高潮が長時間続く恐れもあり、今後の動きに厳重な警戒が必要と気象庁が発表している。

■台風情報(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jp/typh/

「チャーミー」とはベトナムが提案した同国の言葉で、バラ科の花の名前だ。台風の名前は、国際機関「台風委員会」の加盟国などが提案した名称があらかじめ140個用意されていて、発生順につけられる。

■台風の番号の付け方と命名の方法
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html

毎回、洪水害の映像を見るたびに、もし、今にも流されそうな屋根の上で、赤ちゃんを抱いた女性がヘリコプターに救助を求めていた場合、どうのようなヘリの救助資機材で吊り上げることができるのだろうか。考えられるホイスト救助の方法の1つとして、下記の事例がある。

2015年9月10日、台風18号により「平成27年9月関東・東北豪雨」が発生。北関東や東北を豪雨が襲い、宮城、茨城、栃木の3県で計7人が死亡。多くの家屋が浸水した。鬼怒川の決壊で死者2人、3000戸以上が浸水した茨城県常総市では、鬼怒川から溢れ出た濁流がすぐ目の前に迫る中、2匹の柴犬(ボンドとリヤン)を抱えたまま50歳代のご夫婦が屋根の上に取り残された。

救助に駆けつけた自衛隊の第12ヘリコプター隊の中村洋介3等陸曹(26歳)の機転により、バッグの中に犬を入れて、犬が暴れないように要救助者と救助隊員の間に抱き、犬と一緒にヘリコプターへ吊り上げられた。このことは、飼い主と家族であるペットを一緒に助ける自衛隊の決死の救出劇として日本中の注目を浴びた。

世界ではどのように赤ちゃんを抱いた親、もしくは犬を抱いた飼い主など2人以上を一度に救助しているのかを調べてみた。下記のビデオで使われている、レスキューバスケットが日本の水害救助でも有効なのではないかと思った。


"I will rescue You"--Scenes from Hurricane Harvey(出典:Youtube)

レスキューバスケットは、世界的にも有名な米国の「ナショナル・サーチアンドレスキュー・アカデミー」のトレーニングマニュアルにも、軽量(17.6kg)な折りたたみ式でコンパクトであることや意識のある要救助者の救出において、最も素早く救助できる資機材として紹介されている。

■ヘリコプター レスキューテクニック トレーニングマニュアル(HELICOPTER RESCUE TECHNIQUES / National SAR Academy Training Manual)
http://mra.org/wp-content/uploads/2016/05/Helicopter_Rescue_Techniques-_NSARA_Manual-_10-23-2013.pdf
(※66ページにレスキューバスケットの紹介がある)

また、防災ヘリコプターの仕様書を見ても、米国連邦航空局の型式承認番号が付いている資機材であれば、日本国内でも採用可能であることがわかる。

■防災ヘリコプター仕様書(和歌山県)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011900/helicopter/bidding-helitack_d/fil/specification.pdf

2018年9月現在、消防防災ヘリコプターは全国の55団体において75機が運航されている。4年後には、沖縄県でも消防防災ヘリの導入が検討されているが、水難事故や水害時、意識のある要救助者のホイスト救助は、このレスキューバスケットが活躍しそうな気がする。
                                                               
■消防防災ヘリコプターの安全性向上・充実強化に関する検討会報告書(消防庁)
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/bousaiheri_anzen_jyujitu/04/houkokusyo.pdf

■沖縄県消防防災ヘリコプター導入に係る調査検討報告書(沖縄県)
http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/bosai/documents/houkokusyo.pdf

下記の会社で約25万円で販売されているが、直輸入した場合、関税や送料、手数料で32万円くらいになると予想される。

■Lifesaving Systems Coap.
https://lifesavingsystems.com/product/helicopter-rescue-basket-collapsible

・米国連邦航空局 型式承認番号
NSN:  4240-01-250-0313 または 4240-01-HS1-9969 (USCG LSN)
・寸法:113cm x 63cm x 104cm
・重量:17.69kg
・点検:毎回30日おきに、視覚的に事前に毎回使用する
・クリーニング:毎回使用後に中性洗剤でフレッシュウォーターリンス
・作業負荷限界(WLL):272kg
・材料、浮選:インナーオレンジ1050デニールの弾道ナイロンカバーを
備えたエタフォームシリンダー(独立気泡フォーム、
海洋グレード)、3M SOLASグレードの反射マーキング
・材質、ライナー:半硬質プラスチックネット
・材質、フレーム/ボール:304ステンレススチールチューブ材質
(1.58cm&0.95mm)
フラットストック材(3.17mm&4.76mm)
TIG溶接電気研磨またはパワーコート仕上げ。
・材質、主なケーブル:6.35mm "直径7x19タイプ
316ステンレス鋼ワイヤーロープ
(最小破壊荷重2222kg/2,2t)

・レスキューバスケットは、すべての米国沿岸警備隊レスキューヘリコプターに標準装備されており、数多くの国際軍事・民間オペレーターにも採用されている。
・レスキューバスケットのフレーム開口部は、大人2人を収容するために拡大されており、ホイストフックを取り外した後にベールが落下しないように、一体型の柔軟なステンレス製のベールリテーナが追加されている。
・レスキューバスケットのフレームは、管状ステンレス鋼で作られており、コンパクトな状態でヘリへ積み込むためにバスケットの中に折り畳むことができる。
・レスキューバスケットの底枠はプラスチックのメッシュライナーで囲まれていて、外枠に付けられた浮力体により、水面での救助に優れた浮揚性能を発揮し、100%の予備浮力で自己保持する。
・フロートカバーには反射マークが付いており、安全表示が印刷されている。

「Helicopter rescue basket」 (出典:Wikipedia(英文))


下記のビデオでは、要救助者のレスキューバスケットへの収納の仕方のほか、安定性や水面での収容スピードが早いことなどがわかる。

What's it like to be hoisted in a rescue basket? (出典:Youtube)

レスキューバスケットは発明元のU.S. Coast Guard(沿岸警備隊)の研究室において常に改良されており、実際の現場でレスキューバスケットを活用した現場活動隊員の意見や実験を重ねながら軽量化・安全化(落下防止)・コンパクト化が進んでおり、需要が広がっている。


Cadets redesign modern helicopter rescue basket (出典:Youtube)

気象庁によると近年、時間雨量50mmの短時間強雨の発生件数が30年前の約1.4 倍に増加しているほか、日降水量100mm、200mm以上の発生日数も増加し、過去1400年間において現在が地球の温度が最も高いと言われている。気候システムの温暖化について疑う余地はなく、今後さらにこのような水災害の頻発・激甚化が懸念されると発表している。

毎回の大水害で問題になるのが避難に遅れた住民の救助だ。消防防災ヘリの1回の救助コストは約200万円と試算されている。健常者の避難拒否者や避難放棄者等への有料化の検討、災害時用配慮者の避難遅延の予防などはもちろんだが、レスキューバスケットなど、救助隊員の活動上のさまざまなストレスを軽減し、同時に要救助者を安全・迅速に救助できる資機材の採用も検討してはいかがだろうか。

■避難勧告等の判断・伝達マニュアル 作成ガイドライン(内閣府防災担当)
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/guideline/pdf/150819_honbun.pdf
(※水害の避難勧告などは25ページ)

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
https://irescue.jp
info@irescue.jp