2015年の常総市水害で分断された道

常総市水害対策検証委員会(委員長:川島宏一筑波大学教授)は6月13日、「平成27年常総市鬼怒川水害対応に関する検証報告書―わがこととして災害に備えるために―」を発表した。常総市のホームページで閲覧することができる。

常総市水害対策検証委員会による検証報告書について
http://www.city.joso.lg.jp/soshiki/shimin/anzen/shs09/news/1465342760379.html

検証対象の時間的範囲を、災害対応の初動から住民避難が開始されるまでに絞り、常総市役所をの対応を中心に関係機関の対応や市民の動向を調査。ヒアリングは77回実施し、対象人数は延べ177人に及んだ。

検証報告では、「常総市役所の対応」「関係機関との連携対応」「災害時の情報処理と対応」について課題を抽出。それぞれについて具体的な提言をまとめている。

報告書では最後に「社会全体へのメッセージ」を記載。「日本中の多くの河川流域地域は、平成 27 年に鬼怒川で起こったことと同様の水害を被るリスクを抱えています。つまり私たちは、平成 27 年常総市鬼怒川災害を、日本中の河川流域地域の自治体・住民・企業や関係機関の皆さんに、「ひとごと」ではなく「わがこと」として受け止めていただきたいと考えています」と結んでいる。

以下、報告書から一部抜粋。

2) 災害対策本部の対応体制

(抽出された課題)
・災害対策本部ではメンバーの役割分担がないまま全員対応が続けられた結果,対応が逐次的になりがちになったほか,必要な対策内容の抜けや漏れを生む温床ともなった。
・災害対策本部会議と同事務局との連携が不足しており,本来,安全安心課が担うべき災害対策本部の事務局・参謀機能の役割を果たせなかった
・災害対策本部の運営が平素の庁議の延長上で行われるものと解釈されたことから,災害対策を所管する市民生活部長や安全安心課長が災害対策本部での議論をリードできなかった。
・災害対策本部の詳細な活動記録や議事録を残す配慮が不足していた。
・web サイトを通じた市民向け広報やマスメディア対応に当たるべき,情報政策課広報係の職員が災害対策本部内に常駐していなかった
・初期の数日間に警察,消防,自衛隊,茨城県,国土交通省等の各関係機関の連絡要員が災害対策本部会議に参加できなかった

(提言)
・災害対策本部長は,本部設置以降の適切な段階で,平常業務体制とは異なる「緊急対応モード」に移行することを宣言し,全庁職員に周知徹底することが必要である。
・災害対策本部の運営については,通常の庁議とはメンバーも運営方法も大きく異なることが十分に認識されなければならない。
・ 安全安心課職員は,統括班としての災害対策本部の事務局・参謀機能の役割に専念させるとともに,庁内全体で玉突き的に人員の再配置を行うこと必要である。
・災害対策本部には,市民向け広報やマスメディア対応を行う広報担当職員を臨席させ,災害対策本部の動向について把握させる必要がある。
・災害対策本部会議に警察,消防,自衛隊,県,国交省などの関係各機関の連絡要員に参加してもらうことは必須である。

3) 災害対策本部における情報収集・集約

(抽出された課題)

・災害対策本部が置かれた庁議室での情報収集手段があまりに貧弱すぎた。
・独自の情報収集手段の貧弱さゆえに,本部メンバー各個人の携帯電話への通話や庁議室に出入りする非要員がもたらす情報に頼らざるを得なくなり,情報が錯綜した。
・情報集約のための大判の地図資料が用いられなかった
・初期の数日間,警察,消防,自衛隊,茨城県,国土交通省等の関係各機関の連絡要員が災害対策本部会議に参加できなかった
・災害対策本部に数多くの情報がもたらされるものの,羅列されるばかりで,その全体的な集約と総合的な分析が十分でなかった

(提言)
・災害対策本部では独自の情報収集手段を充実させることが必要である。また,各関係機関の連絡要員を災害対策本部に参加してもらうことは必要不可欠である。
・一方,災害対策本部メンバー個人の携帯電話への通話や災害対策本部に訪れる非要員からの情報については,災害対策本部とは別の場で情報収集担当の職員が受け付け,それら情報が整理・集約された上で災害対策本部にもたらされることが望ましい。
・情報処理に関しては,「問い合わせ対応」,「情報収集」,「集約・分析」,「広報」の機能毎に役割を分化させるべきである。
・大判地図への被害・対策状況等の記入による情報集約は,災害対策本部における状況認識の統一や対策の抜け・漏れのチェックの上で有効である。

(了)