おかげさまで、この連載を読んでくださっている方々のペットセーバーズ受講(「ペットの救急法」と「ペットの防災について」)が増えています。

受講者のご職業はペット事業者、トリマー、ペットシッター、しつけトレーナー、ペットホテル運営者、動物看護士などのペット関連事業者、消防士(救助隊員、救急隊員)、看護士、そして一般の方々です。

一般の受講者の方々の多くは、以前飼っていたペットが交通事故、転落事故、溺水事故、ペット同士のけんかにより瀕死の重傷を負ったときに何もできず、そのままペットの死に遭遇してしまった方々。なかには、ご夫婦でやっと前に飼っていたペットの死の悲しさを克服し、新しいペットを迎える気持ちになって受けに来られた方もいらっしゃいました。

病気で長い間にわたって病床に伏しているペットとの別れは心の準備ができていることもあるかもしれませんが、突然の事故によるペットロスは、人生で忘れられない悲しい出来事になってしまいます。

出典:Dallas Highway Animal Hospital, LLC http://www.dhah.org/pet-loss/

消防現場でペットの死に遭遇したとき、不慮の事故でペットを亡くしてしまったとき、または一緒に住んでいたペットが天国に旅立ったとき。私たちはどのように受け止めればいいのでしょうか?

今日はペットの死の受け止め方についてお話しいたします。

ペットはかけがえのない友人であり、家族であり、心のよりどころでもあります。その死を迎えることはとてもやりきれない気持ちになると思います。 

私はマウイ島に住んでいた20年間、牧師としてペットの散骨式(祝別式)の司祭を数々と行ってきました。それぞれの参列者が読みあげる「最後の手紙」を聞くたびに何度も涙があふれてきて、そのご家族がどれだけペットと楽しく過ごされたか、映像として垣間見ることができるほど一緒に生きた時間がいかに貴重で美しい人生の一部であったことが伝わってきました。

手紙を読み上げたあとは一人ひとりが、ペットの骨灰の入った水溶性の紙パックに別れのメッセージを書いたものを、祈りとともに、波打ち際まで届く夕日の光の道に託して流し、その魂を西の水平線に向かって送ります。

さざ波のやさしいお迎えにゆりかごのように揺れながら、骨灰の袋が徐々に溶けていき、波間を白く飾りながら、引き波とともにゆっくりと旅立っていきます。そのときに、参列者の顔が徐々に涙から笑顔になっていきます。


出典:YouTube/Sarah Brightman & Andrea Bocelli - Time to Say Goodbye (1997)

その経験から、死の原因がどうであれ飼い主として、また現場で最後のバイスタンダーとして、きちんとその死を受け入れ、礼を尽くして魂を送ることが心の整理につながると感じています。

出典:Pet Loss Grief Support | Okanagan Pet Cremation http://www.okanaganpetcremation.ca/pet-loss-grief-support/

ペットの死に遭遇したときには、小さくてもいいのでセレモニーをしてあげることで、お互いに心の整理がつくような気がいたします。

飼い主であれば想い出の場所に行って、別れの式を行うのもいいでしょう。現場の消防士であれば、ペットのご遺体が土やすすで汚れていれば、きれいな水で体を清めて手を合わせ、声は小さくてもいいので、「安らかにお眠りください」など、魂に正対して別れを告げ下さい。

何もせずに現場から立ち去ったときの気まずい気持ちを引きずるより、今生きているペットたちの命を救えるように火災予防を教えたり、事故予防を伝えたりすることで、死が無駄にならず、魂が生かされると思います。

またそうすることで、飼い主による不慮の事故で命を落とした場合や、現場で助けられなかった場合でも恨んだりすることはなく、逆に一緒に過ごした時間に対して「ありがとう」という気持ちで旅立っていくのではないでしょうか。

出典:Pet Loss Grief Support | Okanagan Pet Cremation http://www.okanaganpetcremation.ca/pet-loss-grief-support/

よく、「これ以上悲しい別れをしたくないからペットを2度と飼わないという」方がいらっしゃいます。確かにその気持ちは深く察しますし、辛い思いをされていることも伝わってきますが、それと同時に「きちんとお別れを行っていないのではないのかな?」と思うことがあります。

次のビデオをご覧下さい。


Dealing with pet Loss(出典:YouTube)

彼女はとても上手に、心を込めてペットとの別れを行い、ペットとの想い出のアルバムを作ったり、一緒に過ごした日々の日記を読み返したりしています。また、家族とともにペットを受け入れた日のビデオを見ることで自分の悲しい気持ちを解くとともに、天国のペットに今でも愛していることを伝えています。

また「なぜ、ペットが長生きしないのか?」を伝えています。それは「人間がよい存在になるためにはとても長い時間が必要だけど、ペットは短い命でも毎日を楽しく生きることを知っている」からだそうです。さらに以下のように続けます。

「ペットは飼い主がどのような見かけでも、性格でも、お金がなくても、どのような仕事でも人間を差別することはありません。ペットが唯一知っているのは、飼い主への愛し方です。どうぞ、一緒に暮らしているペットとできる限り一緒に過ごしてください。人間は自由にどこにでも簡単に行けますが、ペットはうちであなたの帰りを待っています」。

とてもステキなメッセージよね。

いかがでしたか?

消防士が現場で遭遇するペットは、ただの犬や猫ではなく、飼い主との深い愛と固い絆で結ばれている存在でもあります。どうぞ、飼い主のためにも一緒に助けてあげてください。

すでに飼い主の方、これからペットとの生活を考えていらっしゃる方は、どうぞ「ペットの救急法」や「ペットの防災」についても身につけてください。

きっと、人生でかけがえのない楽しい時間を、思いっきりペットと過ごすことができると思います。

最後に、私がレスキュー隊や救急隊員時代に、私の腕の中で息を引き取った方々へ送っている大好きな歌の一つをご紹介いたします。


出典:YouTube/ Jackson 5-I'll Be There

みなさんのペットライフがかけがえのないものでありますように!


ここにご紹介したコンテンツは、私がインストラクターとして所属している2つの団体、アメリカ最大のペット救急法指導団体であるPetTech の「The PetSaver™Program」と、消防士のためのペット救急法指導団体、「BART(Basic Animal Rescue Training)」から出典しています。

■PetTech
http://www.pettech.net/

■BART(Basic Animal Rescue Training)
http://basicanimalrescuetraining.org/

■BARTのブログで紹介されました。
http://goo.gl/ZoJoX6

■ペットセーバー
http://petsaver.jp

(了)