鶏伝染性気管支炎のIBウイルスとの共通項はあるか(写真:写真AC)

前回から鳥インフルエンザについて紹介していますが、新型コロナウイルス感染の影響が増大していることから、予定を変更してお届けします。

中国湖北省で始まった今回の新型コロナウイルス性肺炎(COVID-19)は、アジア、北アメリカ大陸からヨーロッパ、南アメリカ大陸まで地球規模で広がっています。日本国内でも発病者数が増加、発生地域も広がっており、大流行が起きるのではないかと心配される状況をきたしています。

経済及び社会活動の障害が顕著になっていますが、本疾病の病態、疫学に関する情報は十分ではなく、原因ウイルスの性状も遺伝子性状以外の詳細な解析は進んでいません。

伝染性気管支炎ウイルスの電子顕微鏡写真(出典:ウィキペディアおよびアメリカ疾病予防管理センター)
https://phil.cdc.gov/default.aspx

このウイルスは人に感染し続けてきた人の病原体ではなく、本来の宿主はSARSウイルスやMERSウイルス同様、野生動物(コウモリが有力視)である可能性が高いといわれています。病原体であるコロナウイルスは、動物から人への感染が成立してから時間を経ていないウイルスです。そのため人に感染したウイルスの動態の詳細は分かっていません。効果的な防疫対策を立てるのが難しい感染病です。

筆者は、たまたま1970年代初めから鳥類のコロナウイルス感染による「鶏伝染性気管支炎(IB)」の研究に取り組み、20年間近くさまざまな実験を行ってきました。その結果、興味ある実験成績を得ています。

IBウイルスはコロナウイルス亜科ガンマコロナウイルス属に分類されるため、ベータコロナウイルス属に分類される今回の新型コロナウイルス(COVID-19)とは近縁ではありません。お互いに異なる性状を持っていることが考えられますが、ただし、同じコロナウイルスであることからいくつかの共通点が見られるようです。

現在COVID-19に罹患した人で見られる現象のいくつかを、私たちのIBウイルス実験から得られた成績をもとに考えてみたいと思います。