子どもたちにも知って欲しい「山で迷ったときの鉄則」とは?(画像はイメージです。Photo AC)

山で遭難というニュースを目にすることが多くなっている最近です。遭難事故は気になるけど、うちは登山をしないから大丈夫と思っている方もいるのではないでしょうか?

でも、登山で最も多い遭難である「道迷い遭難」は、実は災害時の心理状態にそっくりなのです。やってはいけないとわかっているはずなのに、最悪の方向に促されるかのように判断を誤らせて行く様は、どんなミステリーよりも謎めいて怖い心理状態です。災害時に言われている正常性バイアス(※)そのものでは?と思います。そのため、防災関係の皆さんにもぜひ、この状況を知っていただきたいと思っています。

正常性バイアス…心理学用語で、「自分にとって都合の悪い情報」を無視したり、過小評価してしまう人の特性のこと。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。(Wikipediaより抜粋)


どういうことでしょうか。

まずこちらをご覧ください。警察庁の統計によると、山岳遭難は毎年2000人以上で推移しています。

出典:平成28年における山岳遭難の概況 (警察庁)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/chiiki/290615yamanennpou.pdf

2000名だなんて、報道されている以上に、遭難は発生しているということですね。そして、遭難事故のうち、最も多いもの、それが「道迷い遭難」なのです。遭難と聞くと、気象条件の急激な変化とか、滑落とか、軽装備で登ったからという印象が強いかもしれません。しかし、統計をみていただければわかるように、単に「道に迷う」それこそが最大の遭難の原因なのです。

山岳遭難は、道迷いが毎年ダントツ一位です。出典:平成28年における山岳遭難の概況 (警察庁)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/chiiki/290615yamanennpou.pdf

でも、山って標識がわかりにくかったりするから迷うのでは?と思われるかもしれません。もちろんそんな場所もあります。地図やコンパスを持っていたら助かっていたのにという事例もあります。でも、それだけではないのです。

詳しくは、山岳遭難といえば、この方にお聞きするしかないという第一人者である羽根田治さん著の「ドキュメント 道迷い遭難」(山と溪谷社刊)を読んでいただきたいです。

羽根田 治氏 

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「ドキュメント 道迷い遭難」(山と溪谷社刊)
961年、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。フリーライター。山岳遭難や登山技術に関する記事を、山岳雑誌や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。主な著書に『ドキュメント道迷い遭難』『ドキュメント単独行遭難』『ドキュメント生還 山岳遭難からの救出』『空飛ぶ山岳救助隊』『山でバテないテクニック』『ロープワーク・ハンドブック』『野外毒本』『パイヌカジ 小さな鳩間島の豊かな暮らし』『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(共著)『山の遭難 あなたの山登りは大丈夫か』(平凡社)『生死を分ける、山の遭難回避術』(誠文堂新光社)などがある。近著は『人を襲うクマ』。2013年より長野県の山岳遭難防止アドバイザーを務める。

「ドキュメント 道迷い遭難」(山と溪谷社刊)※アマゾンへのリンク


この本に出てくる7つの事例は全て生還された方のインタビューに基づくものです。これを読むと、人ってこんなに取り憑かれたように危険な方に誘導されてしまうものなのかということを考えさせられます。本の事例をいくつかご紹介しますが、その前に、山岳遭難のイロハについても知っておいてください。