日曜日の早朝
ニューヨーク市ブルックリン区ブラウンズビル

テレサ・Cによれば、彼女ともう一人のシングルマザーとその子供たちはアパートの中で一緒に暮らしていた。火炎が天井を突き破って落ちてきたとき、必死に家財を持ち出そうとした。安全なところまで走り、そこから距離をおいて建物が崩壊するのをじっとみていた。

“私たちは里親のもとで育てられたので家族はいない”と彼女は言った。“そうなの女二人が一緒に住み子供たちを育てている。そしてこれが今日私たちに起きたことなの。何をすべきなのかさえ分からない。子供4人の学校の制服は持って出たけどそれ以外は何もない”


母親たちが歩道まで引っ張りだした電気製品と衣服は、消火に使われた水で濡れて、だめになっていた。

“私たちは一緒に何とかやっていける”と彼女は言った。“子供たちは大丈夫。それが一番なのよ。どうしてやっていったらよいのか分からないけど、神様が見守ってくれるわ”」

ファーストレスポンダーはその仕事をした。警察は彼らの安全を確保した。消防は燃えさかるアパートから彼らを救助した。緊急医療サービスは負傷者の治療を行った。

そして何を?

誰が責任を持つのか?

2013年8月、私はOEMを辞めて、ニューヨーク大都市圏の最高災害対応責任者としてアメリカ赤十字に入職した。赤十字はニューヨーク大都市圏とその周辺では、政府と連携して住居ビルの火災に対応する。赤十字のボランティアは”仕事を捜す(つまり人を見つける)“訓練を受けている。彼らは冷え込んだ歩道に立っているテレサ・Cと子供たちを見つける。彼らの仕事は、最初は“ハロー”という単純な呼びかけで、そして敬意の込められたアイコンタクトでもって、彼女とつながること、パラレルな宇宙に命綱を投げ入れることである。彼らは次のような言葉をかけるのである。

今回のこと、大変なご苦労をなされていること、については本当にお気の毒です。もしよろしければお子さんたちと一緒に中に入りませんか?私に何かできることがないかお話をさせていただきたいです

ボランティアには食事、住居、衣服、そして通勤通学の足などに関する援助を提供する権限が与えられている。何よりも、これからは全て大丈夫だという希望を与えて生活再建への第一歩を踏み出すことができるようにするのが彼らの仕事である。

この赤十字のプロセスは案件管理と呼ばれており、テレサ・Cのような人たちを、まず話をして、次にそっと肘で突いて、やさしく元の道へ押し戻すことによって、援助すること、第一歩を踏み出すのに必要なものを与えることだ。

同時に数十もの家族を追い立てる大規模な事故に関しては、赤十字は地元の学校やコミュニティセンターに緊急避難所を開設する。人は赤十字の避難所は単に寝て食事をとるところだと思うが、私はそれよりはずっと複雑なものだと言うことができる。赤十字の避難所に来る人は無力にさせられているのだ。避難所の使命は全てをパラレルな宇宙から戻ってくる道に乗せるのに必要なものは何かを理解することだ。

避難所を開設するときに最初にする事柄の一つに閉鎖計画の策定がある。閉鎖計画は動員解除や小屋解体のためのロジスティクス(物流)の手続きではない。それは左側に世帯主の名前、右側に回復計画を記載するスプレッドシートである。

ただちに世帯主と回復についての会話を始める。「あなたの計画は?どこにいくのですか?どうやってそこまで行くのですか?そこに行くのに必要なものは何ですか?」と。

われわれは、判断はしない。人々を箱に収めようとはしない。ただ彼らが必要とするものを与える。それが何であろうと。

振り出しから彼らを出発させるのに必要なものは人によって異なる。いつも金銭・衣服・住居(常に必要とされるものではあるが)だけというわけではない。家主、社会福祉の機関、学校の校長と掛け合うこともある。昼食だけで良いときもある。