南海トラフ地震の観測・評価や防災対応で議論が行われた

内閣府を中心とした政府の中央防災会議は26日、防災対策実行会議「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ(WG)」の第5回会合を開催。南海トラフ地震について予知できないことを前提に、4ケースを想定し、切迫度や危険性に応じた対応のレベル分けなどを盛り込んだWGのとりまとめの方向性案を提示した。また地震の観測・評価体制と防災対応の実施に必要な体制・仕組みについて議論が行われた。

とりまとめの方向性案は、現在の科学では地震の規模や発生時期を高確度で予測することは困難という前提。そのうえで1.南海トラフの東側だけでM(マグニチュード)8クラスの大規模地震が発生2.大規模地震よりは一回り小さいM7程度の規模の地震が発生3.2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に先行して観測された現象と同様の現象が多種目で観測された場合4.東海地震の判定基準とされるようなプレート境界面でのすべりが観測された場合―の具体的な4ケースを想定。そのうえで防災対応の基本的な考え方として、津波の到達など切迫度や脆弱性に応じたレベル化した対応を準備しておくべきとした。

地震の観測・評価体制の検討では現在の制度では、気象庁は前述のケース2が起こった場合であれば津波や土砂災害、家屋倒壊といった注意、地震から1週間程度は震度7の地震が発生する危険性のほか、「この海域では1944年の昭和東南海地震や1854年の安政東海地震などM8クラスの大地震が繰り返し発生している」といった過去事例も発表される。

議論では「過去事例の提示では危機感が伝わらない。今後に備えるべき警告として発表すべきでは」のほか、「特にケース1と2の場合、発災前の被害想定が重要」との意見が出された。政府では南海トラフ地震で、複数の学識経験者から常時助言を受けられ、現象を緊急に評価できるような体制づくりが必要ではないかと提案を行った。

防災対応の実施に必要な体制・仕組みについては、大規模地震対策特別措置法(大震法)が地震予知を前提とした内容となっている。例えば首相の行動では、気象庁長官から地震予知情報の報告を受け、対策実施の緊急の必要性がある場合に首相が警戒対策を発信し、対策がとられる。議論では「高い精度での予知が前提の大震法は見直すべき」「地震が起こるギリギリまで予知の期待を残すのはよくない」といった疑問の声が出された。

WGではこの日の議論を踏まえ、地震の観測・評価体制と防災対応の実施に必要な体制・仕組みについて、とりまとめにどう盛り込むか検討を行う。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介