2020/04/21
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
また図2は、「従業員がカジュアルな雑談(casual “water cooler” conversation)をするようなチャンネルを設けた」という設問に対する回答の結果である(この設問も第1回にはなかった)。第2回の報告書本文においても、従業員の孤独感を和らげるためのカジュアルなコミュニケーションの重要性が指摘されていたが、第3回の調査結果にはこれがさらに多くの組織に認識されたことが分かる。
このように、パンデミックとの戦いが長期戦に入ったところで、メンタルヘルスへの影響により多くの問題意識が向けられるようになってきたことがうかがえる。
もう一つここでご紹介したいのは、パンデミック収束後の計画を検討している組織がどのくらいあるか、という観点である。図3は「復旧計画(recovery planning)を実行する際の発動基準(trigger points)を決めた」という設問に対する回答の結果である。「既に実施している」の数字は増えていないが「実施を検討中」が若干増加している。
これに関連して次のような項目に関しても、「既に実施している」という回答がおおむね半分程度あることから、調査に回答した組織の半分程度は、いつ収束するか見通しが立っていない状況においても、既に平常運転に戻る道筋を具体的に検討していることが分かる(数字はそれぞれ「既に実施している」と回答された割合)。
- インシデント対応体制を見直し、復旧に取り組むための復旧ワーキンググループを組織した --- 55.7%
- ロックダウンが解除された後に、仕事に復帰するためのツール、手段、または判断基準がある --- 48.9%
- パンデミック後(post-pandemic)に出張を再開する際の計画や方針がある --- 44.7%
今回の調査結果は前回に比べると全体的に変化が少ないので、各組織が実施すべきと考えている緊急事態対応策に関しては、前回調査の時点で既に一通り実施済みとなっていたのであろう。これに対して今回の調査結果では、長期戦に入ってきたことで追加的に行われた施策や、収束後を見据えた活動がやや目立ってきたといえる。
もちろんパンデミックの進行/収束状況はそれぞれの国・地域によって異なり(注5)、日本においてもまだ収束の兆しが見えない状況であるから、本調査の結果と日本企業における状況とを単純に比較するのは現実的ではない。むしろ、本報告書に書かれているような施策や活動が今後自社にとって必要になるかどうか、もし必要になるとしたらどのような状況になったら実施するか、といった観点で参考にした方がいいかもしれない。いずれにしても、日本企業にとっても示唆に富むデータが多数含まれているので、ぜひダウンロードしてご覧いただければと思う。
■ 報告書本文の入手先(PDF 16ページ/約1.0MB)
https://www.thebci.org/resource/bci-coronavirus-organizational-preparedness-report-third-edition.html
注1)BCIとはThe Business Continuity Instituteの略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に9000名以上の会員を擁する。https://www.thebci.org/
注2)第1回と第2回の調査結果については、それぞれ次の通り紹介させていただいた。
第93回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness
https://www.risktaisaku.com/articles/-/27124
第95回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況【続報】
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 2nd Edition
https://www.risktaisaku.com/articles/-/28441
注3)報告書は無償配布されているが、BCI会員でない方はメールアドレスなどをWebサイト上で登録していただく必要があるのでご了承いただきたい。
注4)第2回と第3回との間では、多くの項目においておおむね3%程度の変化しか見られないが、メンタルヘルスに関する項目においては10%程度増加しているものがあるので、相対的に変化が目立つ。
注5)第2回の報告書において「(緊急事態対応から復旧段階に移行するための)復旧計画を作成した」という設問に対して「既に実施している」という回答は46.0%であったが、アジアの組織の3/4程度は復旧段階に移行していると述べられている。
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