ケース1. 倉敷市真備町箭田地区の取り組み

4月18日、新型コロナウイルスの影響がなければ、私は岡山の倉敷市で防災キャンプを実施している予定でした。この防災キャンプ、香川大学ダイバーシティ推進共同研究(研究代表者:磯打千雅子氏)で行われた防災キャンプを、岡山県倉敷市真備町箭田(やた)地区でも実施しようというものでした。

写真を拡大 香川大学ダイバーシティ推進共同研究(研究代表者:磯打千雅子氏)で実施した防災キャンプ(女性限定)の報告内容はリーフレットになっています。詳しい内容や問い合わせ先はisouchi.chikako@kagawa-u.ac.jp

上記写真が香川大学でのキャンプの様子です。楽しい防災キャンプの様子が伝わるとうれしいです。

しかし、4月18日といえば、1回目の緊急事態宣言(4月7日)が出された後です。3月の時点で防災キャンプは難しいため、ウェビナーでの防災キャンプ準備講座として、サツキプロジェクト(後述)主催での実施となりました。

香川大学で行った防災女子会キャンプの参加者は、ITも使いこなせる方たちだったのですが、今回の対象は、70代、80代もいらっしゃる地域の方です。初めての人でも参加しやすいといわれる「Zoom」での講演となりましたが、地域の皆さんは今まで一度も使ったことのない方がほとんどです。

それだけでなく、この決定が地域の人にお知らせされたのが1週間前だったそうです。普通、1週間前に「オンライン講座になりました」ということになったら、高齢者の方でなくても、「無理」とか「できない」という声が出てきそうですよね。

写真を拡大 岡山県倉敷市真備町箭田地区(Google)

ところが、真備町箭田地区の皆さんは違いました。私は講演した後に知ったのですが、地域でITクラブという学習会を月に1回開いている大熊正喜さんと池田朋文さん(箭田まちづくり協議会を応援する会)を中心に皆さんが「Zoomとは何か」ということから勉強されたのだそうです。そして講演1時間前から会議室をオープンし、使い方を練習した上で、私の講演となりました。

何も知らずにZoomに入った私がまず驚かされたのは、背景写真がすてきな風景写真になっている方もいらっしゃったことです。スキル高い! 驚いたのはそれだけじゃありませんでした。講演中、質問やご意見がチャットにいっぱい入るのです。

真備町箭田地区ITチームに集まったみなさん

しかも、チャットのプライベートメッセージと全員向けメッセージの区別も完璧です。今、子育て世代向けウェビナーも実施していますが、それと同等、いや4月の時期でこのスキルはそれ以上かもといえるほど。さらに、講演終了後、参加者が自主的に感想をチャットで書いて退出されるのです。オンラインなのに、すごく盛り上がりました。

 

さらに、真備町箭田地区の皆さん最高!って思ったこともあります。「この会議も含めて今日は2つほど、会議や講演に参加します」という感想をいただいたのです。それまでWeb会議を使ってなかった方たちですよ。慣れたという段階から一気に加速して、使いこなしまくりの現実に、心から圧倒されました。

「一体、誰? 高齢者はITが使えないとか言っているのは!」と思った瞬間でした。

このようなWeb会議を実現するためには、パソコンやスマホはマストです。高齢者はガラケーのみという方もまだまだ多くいらっしゃいます。真備でも同じようにガラケーのみという方もいらっしゃいました。その方は、この講演を楽しみにしてくださって講演当日にスマホを購入しようと決意されていました。ただ実際は緊急事態宣言もあり、スマホは購入できなかったのですが、それでも「高齢者はスマホは使えない」と支援者が決めつけるべきではないと思いました。

パソコンも、西日本豪雨で水没した後使っていないという方が、今回のウェビナーを機にまた使ってみることにして、参加してくださったそうです。

それにしても、このように真備町箭田地区の皆さんが積極的にWeb会議を実施できるようになった要因はどこにあるのでしょうか?