「たびレジ」誕生のきっかけ

ちょうど20年前ペルーの大使公邸占拠事件,ここから私が在外邦人保護に携わるようになりました。2013年のアルジェリアのプラント人質事件や2016年ダッカ襲撃テロ事件では、政府専用機に乗って現場に駆けつけ、現場で体制を組んで対応しています。

アルジェリア事件を契機として在外邦人への安全対策は大きく動きました。3カ月以上の滞在者で在留届を出している人に対しては情報を伝達できますが、3カ月未満の旅行者や短期出張者については連絡先がわかりません。これをなんとかしなければいけないと考え「たびレジ」を導入しています。

2016年のダッカの教訓を踏まえ,中堅・中小企業の安全確保も急務となりました。そこで、セミナーにも力を入れています。領事局に対する講演依頼は、3年前で年間約15件、2年前は30件ぐらいだったのが、昨年度は100件を超えました。やはり危機管理に対する関心は本当に年々高くなってきていると感じます。

治安情勢をエリア別に見てみましょう。外務省の危険情報を見るとわかりますが、欧州は基本的に安全だと考えています。ただ時折テロが発生していますので、ある程度注意しなければいけません。2016年はニースでトラックを利用したテロもありました。テロの襲撃に巻き込まれてしまうと身を守ることは困難です。リスクをどれだけ下げることができるかが重要になります。

情報収集や発信も大きなテーマです。私たち外務省が得た情報をどう対外発信しているのか。それは外務省の危険情報を見ていただくことが一番です。例えば、欧州は基本的に安全な地域とうたっていますが、フランスではテロに対し「特別な警戒が必要です」、ベルギーには「テロに警戒してください」とあります。フランスの方が脅威度が高いのですが、両者のニュアンスの若干の違いを読み取っていただきたいのです。

東南アジアでもテロが発生しています。特にテロの脅威を感じるのはフィリピンです。危険情報に「事件が発生したダバオを含め南部はもとより、首都マニラを含む全土においてテロの発生に注意する必要があります」とあります。フィリピンには欧米人に人気のリゾート地もあります。ここも気をつけなければならないところで,日本人が誘拐されかけて難を逃れているケースは実はあるのです。誘拐になったら大きく報道されますが、未遂で終わった場合はあまり報道されません。危険情報では具体的な地名を記載して注意喚起していますので是非参考にしてください。

外務省海外安全ホームページの見方について触れましょう。トップページには、中央に世界地図があります。関心がある国をクリックするとまず危険情報が出ます。4つのレベルで地域ごとに安全対策の目安が表示され、自分の関心のある地域の治安情勢がどうなっているのかがわかります。

また、その国の安全に関する基礎データも非常に参考になります。例えば,インドネシアです。左手は不浄とされていますので使ってはいけない、頭は精霊が宿る場所として神聖化されているので、特に子どもの頭をなでるとトラブルの原因につながりかねない、そういったことが書いてあります。

ほとんどの在外公館では「安全の手引き」を作成しています。是非入手してほしいと思います。テロ対策、誘拐、交通事故、自然災害、旅行に対する注意事項等,詳細に掲載されていますので、参考にしていただきたいと思います。