日和山から見た石ノ森萬画館。海辺の観光スポットとして人気を博す(提供:高崎氏)

津波襲来、状景に絶句

雪が降って来て、対岸(旧丸光前)の水位が急激に下がり、もうすぐ津波が来るだろうと漠然と考えながらも、昔聞いていた50年前の地震津波の予兆(津波が来る前に北上川の川底が見えた)に比べると、まだまだ水位も下がっていなかった。

津波の到着までにはまだ時間がかかると思って、萬画館1階の交流コーナ―でイスに座り一息つこうと思った直後に、ザザーッという水が流れる音とともに川の水が目の前を逆流して行くのを目撃した。

今まで聞いていた津波の襲来と現実との違いに戸惑いながら、急いで館内のスロープ越しに上へ移動し、ここなら大丈夫だろうと少し高い場所から1階の状況を見ていると、萬画館入口付近に設置してあったロッカーや案内板が津波の勢いで正面入り口付近のガラスを突き破り館内へ流れ込み、その後、間髪を入れずに館内に海水が流れ込んできて、館内のあらゆるものが流されていくのを目の当たりにした。

ふと横のスロープのガラス越しに外の様子を見てみると、すでに自分の目の高さまで波が迫っており、館内の海水もスロープを勢いよく上ってきていたので、身の危険を感じて、急ぎ走って萬画館の3階まで駆け上がって逃げた。3階の図書コーナーには出窓があり、そこから館外(港方面)が見渡せるようになっている。津波は収まるどころか、さらに勢いを増して襲いかかって来た。

そして津波の色もだんだんドス黒いものに変わって来て、最初の頃は重油のようなすごい油臭を伴って波の速度をあげて行った。

<家が、車が、人が流される>

内海橋には渋滞で車が列をなして残されていた。東内海橋(港方面)に列をなしていた車は為す術もなく波にのまれて川に流されてしまっていた。ドライバーも逃げられない。萬画館向かいの住宅地は、河口側から順に「バリバリ」とすごい勢いでドミノ倒しになり、ちぎれ崩されていった。河口側からは黒い波とともに南浜町・門脇町方面のものと思われる瓦礫や車がどんどん流されて来た。

おそらく第一波で破壊された河口付近の家屋など、引き波で流された後で、第二波によって北上川を逆流して来たのだろうが、中瀬地区では引き潮を感じることもなく、第一波に重なるようにして第二波が襲来し、どんどんと水かさを増して襲いかかって来た。

崩れた瓦礫や屋根の上には必死にしがみつきながら流されていく方も数多くみかけた。流されていく人達の目の前には東内海橋(港方面)があり、河口から流されて来た瓦礫のほとんどは内海橋にひっかかり堰止められていた。

流されて行く人達は、次々に変わる目の前の状況への対処に必死な様子だった。時速50kmぐらいの勢いで流れてはぶつかり、山積みになっていく瓦礫の中に埋もれて見えなくなる人やぶつかった拍子で足を滑らせてそれっきり見えなくなる人達も数多く見かけた。萬画館の最上階にいて、自分はとてもではないが声をかけることが出来なかった。ましてや助けることなど到底できる術もなく、ただ茫然と見ているしか出来なかった。

雪もより一層強く降ってきており、周囲には壊されて流されて来た車のクラクションと大津波警報のサイレンがけたたましく鳴り響いていた。