JASOの安達理事長は耐震改修への高いハードルについて述べた

NPO法人・耐震総合安全機構(JASO)は9日、「あきらめないマンション耐震改修~耐震診断を終えた住民が欲しい、次のステップ」と題したシンポジウムを東京・文京区のすまい・るホールで開催した。マンション耐震化の段階的工事や改修資金などに関する講演が行われた。

住宅金融支援機構の城野敏江・まちづくり業務部長は機構が提供する管理組合向けのマンション共用部分リフォーム融資について紹介。耐震改修金利が適用できるほか、東京都内では大規模修繕工事を合わせて行えば「東京都マンション改良工事助成」が利用可能で、共用部の大規模修繕工事分は1%を上限に最長7年間、都が補助を行う。同機構によると、マンション共用部分リフォーム融資を受けた案件の戸当たり工事費は2016年度で平均124万8000円。これに対し耐震工事を含む案件では305万9000円になったという。

全国マンション管理組合連合会の川上湛永会長は、本格的な耐震改修工事費を「規模にもよるが戸あたり400万~600万円」と見積もり。耐震補強工事を3期にわたって行っている東京・目黒区の113戸のマンションの事例を紹介した。

シンポジウムではコーディネーターを務めた東京建築士会の近角真一会長が、1度に耐震化を終わらせるのでない、2段階補強についてコスト負担を抑えられる点などについて語った。

JASOの安達和男理事長は「当法人では耐震アドバイザー派遣を行っているが、東日本大震災のあった2011年に517件の派遣があったが近年は150件程度にとどまっている」と説明。「約2200件派遣を行って、診断になるのが284件、実際工事につながったのはさらにその1割だった」とし、診断さらに工事までつなげることへの課題克服の重要性を述べた。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介