「共助と公助の関係を新しい段階でとらえなおすことができるところが、地区防災計画の優れた点」と話す地区防災計画学会会長の室崎益輝氏

地区防災計画学会は23日、公開シンポジウム「九州北部豪雨の教訓と地域防災力」を福岡大学で開催した。地区防災計画学会会長で兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝氏は、冒頭のあいさつで「地区防災計画の仕組みは、共助と公助が連携することが重要。地区防災計画を作って終わりではなく、地域防災計画のなかに位置付けられて初めて成り立つ。共助と公助の関係を新しい段階でとらえなおすことができるところが、地区防災計画の優れた点だ」と、地区防災計画制度による共助と公助の連携の重要性を訴えた。

基調講演では九州地方整備局総括防災調整官の安部宏紀氏が、今年7月の九州北部豪雨における九州地方整備局の取り組みを発表した。今回の対応の中では、同局から被災自治体へリエゾン(連絡員)を派遣。被災し、混乱している自治体の負担を減らしつつ、迅速に事態をつかむことができたという。

また、復旧にあたった国土交通省のTEC-FORCE(※)の活動を紹介。「現在は自治体も職員の数を減らされ、技術者がいなくなっている。被災した東峰村では、技術者は村長さんだけという状況だった。災害時の行政支援には、専門家による迅速なサポートがないとこれからも同じことが繰り返されるだろう」とした。

また、発表した京都大学教授の矢守克也氏からは、「現在は「高解像度ナウキャスト」や「大雨警報(浸水害)の危険度分布」など、インターネットで様々な情報を入手することができるが、内容が高度化、複雑化しすぎて住民に伝わっていないのではないか。災害時に発生する身近な現象を避難のシグナルとして活用する「マイスイッチ」が必要なのでは」とし、災害時の住民とのコミュニケーションのあり方における問題を提起した。

公開シンポジウムの様子

シンポジウムでは、福岡大学法学部准教授の西澤雅道氏がモデレーター役となり、「災害時に何をスイッチにするか」「合併で地域のことが分からなくなった小規模自治体はどうするべきか」などについて活発な議論がなされた。

※TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)‥国土交通省内において、大規模自然災害が発生または発生する恐れが生じた場合、いち早く被災地へ出向き、被災自治体などを支援することを目的に結成された組織。被災自治体などからの支援ニーズを把握し、二次災害の防止や円滑かつ迅速な応急復旧のための被災状況調査や災害対策用機械による応急対策及び技術的助言等を行う。(国土交通省ホームページより http://www.mlit.go.jp/river/bousai/pch-tec/index.html )

(了)

リスク対策.com 大越 聡