発災時に従業員や来訪者の安全を確保し、一斉帰宅の抑制や地域と防災に関する連携を担う存在――それが「事業所防災リーダー」です。東京都では、各事業所内に防災の推進役を登録し、平時からの備えや訓練を通じて初動対応力を高める取り組みを進めています。本記事では、その制度に登録し、地域の防災力向上に取り組む企業の事例をご紹介します。

 

東京都足立区千住に本店を置き、東京都23区を中心に埼玉県・千葉県の一部までを営業地区とする足立成和信用金庫。地域の暮らしと事業を金融面から支えるだけでなく、足立区との災害協定を背景に、帰宅困難者の受け入れに備えた一時滞在施設の運用や備蓄、スタンドパイプ訓練、安否確認の訓練など、地域の“いつも”と“もしも”を支える防災を強化しています。

浦山貴裕(うらやま・たかひろ)さん
足立成和信用金庫
総務部 総務グループ 課長

足立成和信用金庫は、1926年11月、関東大震災の復興期に地域の発展や人々の相互扶助を目的に創業した金融機関です。当金庫は、2026年11月に創立100周年を迎えます。今後も、地域のお役にたつ〝おせっかい″を通じて地域の皆さまとのつながりを大事に寄り添いながら100周年のその先の未来を歩んでまいります。

「安心して暮らせるまち」は、平時の信頼関係と、災害時の具体的な行動がセットになって初めて形になります。当金庫では事業所防災リーダーを10名登録し、本店・本部と各店舗で役割分担を明確にしながら、初動対応力の底上げを図っています。安否確認はシステム(アプリ・メール)を活用し、不定期の発信テストを重ねて、いざという時にも使えるように訓練を継続。緊急時の連絡はSNS等も併用し、電話連絡網もバックアップとして維持するなど、複数の手段で情報が途切れない体制を整えています。

本店・本部ビルは、2017年に「優良防火対象物認定制度(優マーク)」の認定を受け、防火・防災の取り組みを定期的に点検・更新しています。更新時には消防署による立ち入り検査や自衛消防活動訓練が必要となるため千住消防署立ち会いのもとで訓練を行い、避難誘導や通報、初期消火、応急救護まで一連の動きを確認。職員の救命講習も全員が受講し、3年ごとの再講習で知識と手順をアップデートしています。AEDは本部・全店舗に設置し、地域の“もしも”に備えています。

被災者受け入れなど足立区と災害協定

地域連携も当金庫の大切な柱です。2016年には足立区と「災害時における応急対策活動に対する支援に関する協定」を締結。大規模災害発生時の生活関連物資の提供や、復旧に必要な物資・機材の優先提供、被災した近隣住民や帰宅困難者の受け入れへの協力などを進めています。北千住駅前の滞留者対策では推進協議会の訓練に参加し、2025年には駅から本店までの誘導ルート確認や、情報発信の方法、一時滞在施設の開設手順(受付、居室案内、備蓄倉庫の確認など)を関係機関と一緒に訓練を実施いたしました。

画像を拡大 地下に設置された大容量給水タンク「マルチアクア」。浄水を提供できる。

本店・本部ビルは、6階会議室を最大70名の一時滞在施設として位置づけ、飲料水、アルファ化米、うどん、ビスケット、毛布などを備蓄しています。地下には約1,000名分の飲料水を確保する大容量給水タンク(マルチアクア)を設置し、ペットボトルによる備蓄に加え、断水時の飲料水確保にも備えています。トイレについてもマンホールトイレ1台を用意し、携帯トイレが不足した場合のバックアップを確保。行政から滞留者の受け入れ要請を受けた際は、社内で定めた金庫マニュアルに基づき受け入れの可否を決定する仕組みとなっているほか、マニュアルに基づく訓練も実施しております。

画像を拡大 消防車両が入れない路地裏などでの消火活動が可能になるスタンドパイプも同金庫の敷地内に設置。

初期消火と救命の力を地域へ広げる取り組みとして、スタンドパイプを区内12か所(支店10カ所+北千住エリア2カ所)に設置し、町会や消防署、区役所と連携して使用訓練も継続しています。例えば2025年には、六木支店で近隣町会やお取引先の皆さまにもご参加いただき、消火器・スタンドパイプ・AEDの取扱訓練を実施。狭い道路で消防車が入りにくい場面を想定し、「身近な消火栓を使って、まずは初期消火を」という考え方を、訓練を通じて地域の皆さまと共有しています。さらに、本店・本部ビルの職員を中心に自衛消防団を組成し、地元消防団への入団や「千住自衛消防グランプリ」への参加など、日々の啓蒙活動により防災意識を高める工夫も続けています。

また、訓練や設備だけでなく、「防災を身近に感じてもらう場づくり」にも力を入れています。足立区や消防署と連携し、地域のお客さま出店によるマルシェと同時開催でAED体験や起震車による地震体験などの防災体験ができるスタンプラリーを実施するなど、買い物のついでに気軽に参加できる工夫も。店舗周辺の避難所やハザードマップの確認を日頃から行い、地域の状況を“自分ごと”として捉える文化を育んでいます。

目指すのは災害時に助け合える地域づくり

創業の原点が「復興を支えること」にあるからこそ、私たちは災害の“その後”まで見据えています。平時は地域の事業や暮らしを金融面から応援しつつ、非常時には行政・消防・地域団体と肩を並べ、物資や情報、安心できる居場所をつなぐ役割も果たせるように準備。訓練で見えた課題も次の改善につなげ、誰もが迷わず動ける仕組みをこれからも続けます。

私たちが目指すのは、災害が起きないよう願いながらも、起きた時に慌てず、助け合える地域づくりです。金融機関として地域の暮らしと事業を支えることはもちろん、安心・安全を守る備えを一歩ずつ積み重ね、これからも皆さまの“いつも”のそばで、そして“もしも”の時にも力になれる存在であり続けます。

 


特別な設備や大きな組織変更がなくても、防災への第一歩は踏み出せます。

『事業所防災リーダー』は、公式サイトから簡単に登録可能で、事業所内で複数名を登録することもできます。

まずは「備える意思」を形にすることから始めてみませんか。

画像を拡大 防災情報コンテンツが充実している『事業所防災リーダー』Webサイト

 

画像を拡大 オフィシャルページから簡単に登録できる