2015/09/25
事例から学ぶ
「リスク対策.com」VOL.51 2015年9月掲載記事
災害時の広域避難場所となる防災公園で、指定管理者である民間企業がBCPの策定に取り組み、ついには事業継続マネジメントシステムの国際規格であるISO22301*の認証を取得した。きっかけは、防災公園を管理運営するにあたって「災害時に自分たちが何とかくしなてはいけない」という強い使命感からだった。
*ISO22301BCPを運用するための事業継続マネジメント体制を、国際標準化機構の決定により世界共通の規格としてマネジメントシステム化したもの。事業継続マネジメントを構築・運用するためにしなくてはいけないことが要求項目として示されている。
大阪市と東大阪市、八尾市の3市にまたがる久宝寺緑地は、災害時の広域避難場所および後方支援活動拠点に指定されている大阪府営の公園。面積は38.4haと甲子園球場の約10倍の広さを持つ。公園内には野球場、陸上競技場、テニスコート、プールなどの運動施設があり、随所に花や草木が植えられている。
広域避難場所は、地震などによる火災が延焼拡大して地域全体が危険になったときに避難する場所。災害時に、危険を回避するために一時的に避難する「一時避難場所」が危険な状況になった際に、大人数の避難者を受け入れられるよう全国各地に整備されており、久宝寺緑地で想定される避難者数は19万人に上る。
同公園は、警察、消防、自衛隊、医療機関など救援活動の拠点(後方支援活動拠点)としても指定されており、災害発生時には、こうした活動部隊を速やかに受け入れられる体制を整えていなくてはならない。
この公園を2010年から指定管理者として管理運営しているのが株式会社美交工業(大阪市西区)だ。社員約120人の中小企業。1980年に創業し、ビルメンテナンスを主たる業務として、現在、久宝寺緑地のほか、大阪市住之江区の住吉公園の管理運営を行っている。久宝寺緑地の管理にあたる社員は30人弱だ。
同社は、これまでも、街中にある中小規模の公園については清掃業務の実績があったものの、久宝寺緑地ほど大きな防災公園を任されるのは初めての経験だった。専務取締役の福田久美子氏は「当初はいざ災害が起こったとき、指定管理者として何をすべきか具体的なことが見えていませんでした。公園の所有者である大阪府との役割分担表はありましたが、被災者の救護手順、物資や救出工具の準備などの詳細が何も決まっていない状況で、“実際に避難者が押し寄せてきたら、とても対応できない”と思い、現実的な防災計画の必要性を感じていました」と当初を振り返る。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方