2016/09/27
誌面情報 vol52
日本水産株式会社の100%出資会社であるニッスイマリン工業株式会社は、船員や洋上作業従事者など海上で働く人を対象にしたサバイバル訓練メニューを強化している。2011年に、英国で石油開発事業者向けの安全教育を普及している「安全な作業標準や作業者の安全教育を普及するための組織」OPITO/オピト:Offshore Petroleum Industry Training(Organisation)認定の訓練施設を整備したことを皮切りに、ヘリコプター乗員向け不時着対応訓練や、「船員の訓練および資格証明並びに当直の基準に関する国際条約」(STCW条約)に基づいた訓練など、国際基準の訓練メニューを備えている。現在、運輸・エネルギー事業や、金属機械工業、化学工業などの幅広い業種の企業に加え、消防航空隊やドクターヘリなどレスキュー隊員を対象に訓練サービスを提供している。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年11月25日号(Vol.52)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月27日)
同社が海上作業者向けの訓練に取り組みはじめたのは2011年。それまでは海洋土木事業や、船舶運航管理事業、海洋資源開発支援事業、エンジニアリング事業などを基盤としてきたが、2011年に経済産業省の三次元物理探査船「資源」の運航を受託する際、OPITOの認証した訓練施設で船員が訓練を受講することが条件とされたことから、自社でOPITO認証の訓練施設を整備。この施設を使って、初期消火や応急処置などの安全に関する基本訓練、ヘリコプターの安全と脱出訓練、救命艇訓練、シーサバイバル訓練などをメニュー化した。
2014年には、STCW条約に基づく基本訓練の認証を国内で初取得。現在、STCW条約に規定される基本訓練を日本海事協会認証訓練として実施している。また、同年には、風力発電設備所有者や風力タービンメーカーらで構成する非営利組織GWO(Global Wind Organisation)から風力発電作業に求められる「高所作業、防火と消火、応急処置」など基本安全訓練の認証も国内で初めて取得した。このほか、国土交通省の登録施設として、限定救命艇手登録講習、救命艇手同等認定講習なども実施している。
訓練の内容はコースによって異なるが、大きく①安全に関する導入、②個人の安全と社会的責任、③ヘリコプターの安全と脱出、④応急処置、⑤シーサバイバル、⑥救命艇、⑦防火と消火、⑧高所作業、⑨マニュアルハンドリングの項目から構成され、受講日数もコースごとに決められている。
例えば、OPITO認定の訓練のBOSIET(安全に関する基本訓練)なら、①③④⑤⑥⑦で、計3日を要する。FOET(BOSIETの更新訓練)なら③④⑤⑦で1日、HUET(ヘリコプター水中脱出訓練)なら③だけで1日となる。
費用もコースによって異なるが、BOSIET訓練コースで約20万円。受講者数は年々増えており、2015年10月末で2000人に達した。同社代表取締役社長の原田厚氏は「今年6月からは海洋研究開発機構が実施していた潜水技術研修を引継ぎ開始している。警察や消防の方に多く受講していただいているが、官民を問わず、海上で働く人にとって必要なあらゆる訓練を提供していきたい」と話している。
(了)
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