元陸上自衛隊化学学校副校長株式会社 重松製作所主任研究員 濵田昌彦

はじめに


リオのオリンピックを2年後に控えて、ブラジルのCBRN分野でのオリンピック準備はどこまで進んでいるのだろうか?ふと、そんなことを考えることがある。きっかけとなったのは、2年前にカリフォルニア州サンディエゴで開催されたCBRNe Convergence 2013というシンポジウムで聞いたブラジル陸軍マリツィア大佐の講演であった。彼は、サッカーワールドカップでのCBRN防護を一手に担当していた。「意外に進んでいる。レベルが高いなぁ」というのが正直な感想であった。分野によっては、例えばCBRN関連データの融合や、遠隔地から監視・測定をするスタンドオフセンサーの活用に関しては、日本よりもはるかに先を行っているようにも感じた。 

ブラジルワールドカップでのCBRN対策を紹介できることは、日本の関係者にとっても意義深い。特に、CBRNセンサーの誤報の問題や、マスデカン(大量被害者の除染)、多機関連携、モバイルラボ、地方との能力格差、政治家のCBRNに対する姿勢の問題などは、大規模イベントにおけるCBRNを考える上で、避けて通れない世界共通の課題であろう。これらを学ぶことは、2020東京オリンピックにおけるCBRN準備に直結する。

なお、この話の細部は、2016年6月に、品川の東京マリオットホテルで開催予定のCBRNe Convergence Asiaで詳しく聞くことができる。ブラジルの現在の担当者からの発表を楽しみにして頂きたい。

2014年
ブラジルワールドカップの年。この年は、実はいろいろなことがあった年であった。中東では、イスラム国が勢力を伸ばし、シリアやイラク国内では何度も化学兵器が使われた。もちろん、イスラム国がこの時点においてブラジル国内で化学テロなどを行うことは考えにくかったが、CBRN対策を考える上で、多くの要因があったことは事実であろう。

積み重ね
ブラジルが、CBRN対処能力を一朝一夕に持つようになったわけではない。ブラジル陸軍が主体となって育成してきたブラジルのCBRN能力は、2011年のWorld Military Games(各国軍隊のオリンピックのようなもの)のセキュリティを整備する中で、最初の飛躍を見せる。その後、2013年7月にはワールド・ユース・デイに合わせてローマ法王がブラジルを訪問する。この時も、海岸ミサでコパカバーナビーチを埋め尽くした300万人の群衆(信者)に対するCBRNテロを警戒して、ブラジル政府は万全の体制を敷いた。その前の6月には、サッカーのコンフェデレーションズカップがあり、本番のワールドカップに向けてさまざまなCBRN防護システムが試され、訓練も本格化した。

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