BCP・保険が明暗を分けた

鬼怒川が決壊した常総市の多くの企業が苦境に立たされている。決壊現場近くの本石下地区にある大型スーパー「アピタ石下店」は12月6日に

閉店することを発表した。市商工会の会員1700社のうち、浸水した鬼怒川東側に立地するのは約1000社にのぼる。被害の全容はまだ明らかになっていないが、設備機器がすべて水没し数千万円の被害を出している企業もあるという。一方で被害を出しながらも、事業を早期に復旧した会社もある。BCPを策定していたことや、火災保険で水災特約に入っていたことが奏功した。

常総市役所から数百メートル離れた水海道(みつかいどう)渕頭町にある半導体素子の研磨加工メーカーの株式会社アトックは、本社である事務所が50㎝以上浸水する被害に見舞われた。生産工場は福島県岩瀬郡にあるため生産活動への直接的な被害はなかったが、本社が被災したことで、事務や営業の業務が1週間から2週間にかけ中断した。 

茨城県では、商工労働部が県内中小企業のBCP策定を支援する事業を2012年から行っているが、同社も2014年にこの事業に参加し、BCPを策定した。地震を想定し、社会インフラ(電気、固定電話、公共交通機関)の停止、従業員の出社困難、設備・機器の損傷、社内インフラの損害などの事態に陥った時にも、14日以内に70%のサービスが提供できるようにすることを目標に設定。携帯電話番号・メールによる従業員の緊急連絡網の構築、徒歩出社可能な従業員による緊急対応体制の構築、設備・機械の自社診断・修復技術の強化と協力会社の連携、サーバーのバックアップなどの準備を進めていた。 

取締役専務の青木大氏は「生産工場である福島工場が災害時でも機能できるようにとBCPを策定しました。本社の水害は正直なところ想定していませんでしたが、私自身この地で生まれ育ったこともあり、この辺に水害のリスクがあることは分かっていました」と話す。 

水海道は、平成の大合併で、結城郡石下町を編入し常総市と改称した。常総市の名前からは、水との縁は感じられないが、江戸時代後期には「鬼怒川の水は尽きるとも、その富は尽くることなし」と称されるほど、鬼怒川の河川水運によって周辺地域の中核都市として発展してきた土地である。 

同社の隣には、社長である青木氏の両親の家が、その隣には祖母が住む家がある。祖母の家には約70年前に鬼怒川が決壊した時の浸水の跡がまだ残っている。青木氏はそんな昔の洪水の話を祖母から聞かされて育ってきた。 

会社は、鬼怒川から1㎞、小貝川から数100m、さらに両河川の間を流れる八間堀(はちけんぼり)川からも数100mの場所に位置する。 

「決壊の前日から、経験したことがないようなものすごい雨が降っていたので、心配はしていました」(青木氏)。 

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