2021/08/24
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
以上のデータを使って算出されたリスク指数は、図2のように地図上で色分けされて表示されている。図2は全ての自然現象を対象として計算されたリスク指数を表示した状態だが、画面左上にある「Risk Index」というボタンの右側にあるプルダウンメニューで、特定の自然現象に関するリスク指数を選択して表示することもできる。
また、同じく画面左上に並んでいるボタンをクリックすることで、各地域ごとの予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスを表示することもできる。予想年間損失についても、ボタンの右側にあるプルダウンメニューで特定の自然現象だけを選んで表示できる。
さらに、詳しく知りたい郡を地図上でクリックすると、その郡におけるデータがクローズアップして表示される。図3はカリフォルニア州サンフランシスコ郡のデータを表示させた例である。図では総合的なスコアのみが表示されているが、右側のウインドウの中で下の方にスクロールしていくと、自然現象ごとのスコアが表示されている。また右上にある「Risk Index」と書かれているプルダウンメニューをクリックして、予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスに切り替えることもできる。
なお、郡を選択した状態で右下の「Create Report」という部分をクリックすると、その郡におけるリスク指数、予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスに関する情報を全て含むレポートが作成される。また、複数の郡を選択して比較レポートを作ることもできる(最大20カ所)。
ちなみに、リスク指数の算出手法に関しては、411ページにわたる詳細な技術文書が公開されている(注3)。内容も情報量も全く筆者の手に負えない代物であるが、このような技術文書が公開されるのは、研究者の方々にとって有用なのではないかと思う。
FEMAとしては、地域コミュニティーにおける災害対策に役立ててもらうことを意図して、このようなデータを公開しているが(注4)、コミュニティーに限らずさまざまな活用方法が考えられる。
米国内に複数の事業所がある企業にとっては、各事業所における災害リスクを把握するのにも役立つし、米国内に多数のサプライヤーがある場合には、サプライチェーンのリスクアセスメントにも便利であろう。もしかしたら損害保険料の算出や不動産価格にも影響を与えるかもしれない(筆者の勝手な推測であり、根拠は全くない)。
せっかく税金を使ってこのようなアプリケーションが整備され(注5)、災害リスクに関する情報にアクセスしやすくなっているのであるから、地域コミュニティーや民間企業などがこれらをうまく活用して、今後起こり得る災害への備えが進められることを期待したい。
注1)社会の脆弱性についてはSocial Vulnerability Indexとして、次のURLで説明されている。
https://artsandsciences.sc.edu/geog/hvri/sovi%C2%AE-0
またコミュニティーのレジリエンスについては、Baseline Resilience Indicators for Communities として、次のURLで説明されている。
https://artsandsciences.sc.edu/geog/hvri/bric
注2)「Winter weather」については次のように説明されている。
Winter Weather consists of winter storm events in which the main types of precipitation are snow, sleet, or freezing rain.
注3)技術文書は下記URLからダウンロードできる。
https://www.fema.gov/sites/default/files/documents/fema_national-risk-index_technical-documentation.pdf
注4)下記URLの「How to Use the National Risk Index」という部分にそのような趣旨の記述がある。
https://www.fema.gov/flood-maps/products-tools/national-risk-index
注5)前述のサウスカロライナ大学の研究も政府からの助成を受けている。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方