2021/09/07
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
2つ目のセクションで筆者が特に注目したのは、事後レビューに関する調査結果である。事後レビューについて本報告書では「post-incident review」の略として「PIR」と表記されている。なお、読者の皆さまの中には「after-action review」(AAR)という用語の方がなじみがあるという方が多いかもしれないが、これらは同義と考えて差し支えない。
図1は新型コロナウイルス対応に関する事後レビューを実施したかを尋ねた結果である。回答者の45.9%が「実施した」、36.2%が「まだ実施していないが実施予定」と回答している。
事後レビューの必要性や重要性については、『リスク対策.com』においても再三にわたって指摘されているので(注3)、改めて説明する必要はないと思われる。本報告書においても回答者の多くがその必要性を認識していることが分かる。
「まだ実施していないが実施予定」と回答した方々は、まだパンデミックは収束していないから事後レビューを行っていない、という認識なのかもしれない。しかしながら、回答者の45.9%は、恐らく何度めかの波を超えたタイミングでレビューを実施しており、次回以降の波に対してはレビューの結果を生かしてより良い対応ができたのではないかと考えられる。
また図2は事後レビューに誰が参加するかを尋ねた結果である。主に危機管理や事業継続の担当者(担当部門)が中心となっている様子が分かる。人事(Human resources)が参加しているという回答が多いのは、パンデミック対応に関するレビューだったからかもしれない。
本報告書では、経営層(Board/senior executive team)が70.7%「しか参加してない」ことが懸念されている。回答者からのコメントとしても、経営層が事後レビューに参加しないことに対する不満が表明されているものが複数紹介されており、経営層を事後レビューに参加させることの困難さが問題視されている。
筆者が特に注目したのは、広報(Communications and/or PR)を含むという回答が66.2%あることである。これは危機管理における対外広報の必要性や、レピュテーションに対する影響の重大さが認識されていることの現れであると言えよう。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方