2022/01/11
事例から学ぶ
電気通信設備工事のタカミエンジ(大阪市城東区、室田正博社長)は、2018 年9月に関西圏を襲った台風21号をきっかけにBCPを策定。従来から運用しているチャットアプリを使い、日常業務のなかに緊急時の連絡・指示を標準化するとともに、BCP意識を社員に浸透させている。長時間・広範囲の大規模停電を目の当たりに体験し、定めた目標はグリッド電源の喪失後も72 時間は会社を自立運営すること。自社で非常用電源を確保するにとどまらず、BCPセミナーを企画・開催して知識を広く発信、地域産業の防災・事業継続力の底上げに貢献する。
タカミエンジ
大阪市城東区
❶2018年台風21号をきっかけにBCPを策定
・災害と長時間の大規模停電、その後の経済的混乱を目の当たりに体験し、自立的な経営の重要性を実感。自社の特性に即したBCPを策定
❷風通しのよい組織風土を生かし従来のチャットアプリを最大活用
・災害時の連絡・指示は新たな体制・仕組みを構築するのではなく、従来から運用していたチャットアプリを拡大活用。緊急時の情報も日常業務のなかでやり取りすることで防災・BCP活動を標準化、社員への浸透を図る
❸72時間の非常用電源確保さらに地域産業への普及啓発
・72時間を目標に非常用電源の確保に努めるとともに、独自セミナーを企画・開催して介護事業者らへ非常用電源の必要性や知識を発信。地域産業の防災・BCP意識の向上に貢献する
タカミエンジが2018 年に策定したBCPは、自社の企業規模や事業特性、組織風土にかなった、いわば「身の丈BCP」だ。「すごい仕組みを構築したわけでも、特別な方針を掲げたわけでもない」と室田正博社長はいう。
「完ぺきな計画をつくっても、ファイルにして置いておくだけでは意味がない。重要なのは不測の事態に見舞われたとき、業務モードを迅速に切り替えられるだけの社員教育と事前準備だと考えた」
公共・民間施設の電気通信設備工事や保守点検が事業の柱。施設オーナーから直接依頼を受けることもあるが、関連メーカーや専門工事会社からの受注が多い。総勢14人の社員のうち、11人が現場で施工にあたる技術者。総務を含め大阪に11 人、東京に3人を配している。
同社にとって、局所的な停電は珍しくない。施設構内の設備・配線トラブルやブレーカーダウンの対応はむしろ日常。災害時はそれらが一気に増えるものの「復旧作業だけなら基本的に人と車と道具、資材があれば何とかなる。全員で協力し一つ一つ対応すればパニックになることはない」
少人数のため社員間のコミュニケーションも円滑だ。全員にスマートフォンを支給し、社内連絡用アプリとして「Googleチャット」を導入。普段から上司・部下の垣根なくやり取りし「誰かが情報を発信すればすぐレスポンスがある状態」が定着している。
それでもBCPを策定したのは、2018 年9月に関西圏を襲った台風21号がきっかけだ。「初めて、事業継続できなくなるのではないかという不安に襲われた」と振り返る。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方