2022/08/31
事例から学ぶ
東急不動産ホールディングス(東急不動産HD:東京都渋谷区、西川弘典代表取締役社長)は2021年にスタートした長期経営方針「GROUP VISION 2030」で環境経営を掲げ、今年5月に発表した中期経営計画で環境を起点とした事業機会の拡大を目指すと宣言。「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」の3つの重点課題に取り組むとし、気候変動リスクのシナリオ分析の成果を具体的な対策として盛り込んだ。
記事中図表提供:東急不動産HD
東急不動産ホールディングス
東京都
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.28(2022年7月号)に掲載したものです。
❶TCFD提言に賛同し具体指標をもって対策推進
・社会課題の解決に向けて気候変動対応を開始。シナリオ分析の結果からこれをグループの重要リスクと位置づけるとともに、TCFD提言に賛同してグローバル視点から対策を見直し、具体的な指標をもって推進
❷シナリオ分析で各事業のプラス・マイナスを評価
・脱炭素社会への移行リスクと災害激甚化などの物理的リスク、適応ビジネスに関連する機会を網羅的に分析し金額で評価。各事業のプラス・マイナスを見極めて対策を推進し、機会獲得につなげる
❸導き出した対策の目標を着実に達成する
・進捗をモニタリングし課題を常に意識しながら、導き出した気候変動対策を着実に推進。目標を達成していくことで実行の本気度を顧客や社会から評価してもらえるようにする。
社会課題の解決に向け気候変動対応
東急不動産HDグループサステナビリティ推進部・企画推進室室長の古賀喜郎氏は、気候変動リスクの取り組みを「戦後の深刻な住宅不足をはじめ、さまざまな社会課題の解決に取り組み価値を提供してきたのが我々のビジネス。気候変動対策もその一貫」と語る。
同社では2018年に環境省の支援を受け、気候変動のシナリオ分析に着手。事業の中核である都市開発事業では2030年をターゲットに、リゾート事業では2050年をターゲットに分析を実施した。2019年3月にはTCFD提言への賛同を発表した。
2020年にはこの2つの事業に住宅事業と再生可能エネルギー事業を加え、4つの事業で分析を実施。2030年と2050年の中長期的な分析結果がそれぞれの事業で出そろった。古賀氏はTCFDの提言に賛同したメリットを「1つは世界的な気候変動リスクに対応する流れに合わせ、TCFDというグローバルな基準をもとに気候変動対策を見直せたこと。2つに具体的な指標を提示でき、対策を推進しやすくなった」と話す。
シナリオ分析の結果から、同社は気候変動リスクを、投資リスクや財務資本リスクなどと並ぶ東急不動産HDにとって重要性の高いリスクと位置づけた。「不動産業は業態的に有利子負債が多く、金利リスクが高い。また、景気の影響を受けやすく、マーケットリスクのようにコントロール不可能なリスクを抱えている。当社の場合、気候変動リスクも、これらに並ぶ重大なリスクと認識されるようになった」と古賀氏は説明する。
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