北朝鮮によるミサイル発射実験が続いています。昨年2022年には弾道ミサイルなどの発射回数は40回近くに上り、今年もペースは落ちそうにありません。4月13日には、Jアラートを通じて、発射されたミサイルのうち1つが北海道周辺に落下するとみられるとの情報が報じられました。今回はJアラートへの対応について考えてみます。

■事例:ミサイル着弾を想定したBCP

製造業で危機管理を担当しているAさんは、先日、弾道ミサイルによるJアラートが発報された場合の社内対応について検討をするようにと上司より命ぜられました。

Jアラートは、主に北朝鮮からの弾道ミサイルの発射により発報される場合が多いですが、幸いにも過去のJアラートでAさんの企業の業務が影響を受けたことはありませんでした。しかし、昨年10月4日、11月3日、そして先日の4月13日と、ここにきてJアラートが発報される日が多くなってきています。さらに、北朝鮮だけでなく、台湾をめぐる米中の緊張関係も高まってきていることを受けて、Aさんも「いよいよ他人事ではなくなってきているかも…」と感じています。

Aさんの企業では、地震や水害などの自然災害に備えるためのBCPは策定済みですが、Jアラートに対する具体的な対応策はまったく記載がありません。

Aさんは漠然と、「Jアラートが業務範囲内に出されたときは、速やかに情報を収集した上で、社員や顧客に適切な情報提供をしなければ…」とは考えています。しかし、情報提供方法や内容、状況に応じた適切な行動指針など、まったく決まっていません。

実は社内からも「もしJアラートが自分たちの業務地域内に発報された場合、出社の要不要はどう判断すればいいのか?」との声が上がってきています。製造現場からは「工場のラインを止めてもいいのは、どのようにJアラートが発報された場合か決めておいてほしい」という要望も出ています。

Aさんは「社員の生命や安全に関わる問題だけに、危機管理担当者として何がしかの対策を考えなければならないが、何をどこまで決めておけばいいのか、出社の要不要に関わる地域的な範囲や、その場合の勤怠の管理はどうするべきなのか、また、ミサイルの着弾を想定したBCPを策定する必要があるのか?」と思い悩んでいます。

■解説:Jアラートで伝達される情報の種類

Jアラートで伝達される情報は、気象庁が発信する緊急地震速報や津波警報、各種特別警報などの「気象関連情報」と、内閣官房が発信する「国民保護情報」の2つに大別されますが、ここでは「国民保護情報」のことについて見ていきます。

内閣官房の国民保護情報には、主に以下の4つがあります。

 

これら国民保護情報のうち、最もJアラートが発信されるケースが多いものが「弾道ミサイル」によるものです。

内閣官房の「国民保護ポータルサイト」では、弾道ミサイルの情報伝達の流れとして以下のように整理されています。

出典:内閣官房「国民保護ポータルサイト」https://www.kokuminhogo.go.jp/

また、このサイト内では「弾道ミサイル落下時の行動について」もわかりやすくまとめられています。

弾道ミサイルのJアラートが発信された際の行動

<屋外にいる場合>

 近くの建物の中か、地下に避難(注:できれば頑丈な建物が望ましいものの、近くに無ければそれ以外の建物でも構いません)

<建物が無い場合>
 物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る

<屋内にいる場合>
 窓から離れるか、窓のない部屋に移動する

もし、近くにミサイルが落下してしまった場合には、

<屋外にいる場合>
□ 口と鼻をハンカチで覆い、現場から直ちに離れ、密閉性の高い屋内または風上へ避難する

<屋内にいる場合>
 換気扇を止め、窓を閉め、目張りをして室内を密閉する。

これ以外にも、自治体が作成したマンガや動画、各種Q&Aなど、役に立つ資料が掲載されていますので、特に危機管理担当者は一度目を通しておくことをおすすめします。