警察庁は3日、治安情勢の変化や組織内の問題から生じる「警戒の空白」を防ぐため、前例踏襲を排した新たな組織運営を行うと発表した。深刻化する犯罪への体制を強化する一方、合理化を進めて人員配置を見直す。露木康浩長官をトップとする「警察力最適化推進本部」を同日設置し、都道府県警察と連携して改革を進める。来年4月以降の組織改正や人員配置を目指す。
 同日開かれた全国本部長会議で、露木長官は「本部長自ら先頭に立ち、職員一丸となって対策を着実に推進し、国民の信頼と期待に応える一層の成果を挙げてもらいたい」と訓示した。
 体制を強化するのは、社会情勢の変化により深刻化が進む(1)サイバー犯罪(2)SNSを通じて離合集散する犯罪グループ(3)経済安全保障(4)組織に属さない単独犯「ローン・オフェンダー」―など。
 これまで「準暴力団等」の呼称だった組織性が薄い反社会的勢力を「匿名・流動型犯罪グループ」と分類。新たな検挙体制を設ける。具体的には、闇バイトで実行役を募る特殊詐欺団や強盗団のようなケースが対象となる。グループが得た犯罪収益を元手に繁華街や歓楽街に進出する懸念があることから、組織犯罪対策部門と生活安全部門が協力して取り締まりに当たる。
 合理化を進める分野は多岐にわたる。警察署の業務では、近隣の数署をブロック運用した場合、統合できる担当がないかなどを検討する。交番や駐在所は、地域の実情に応じて勤務体制や人員の配置基準を見直し、柔軟な運営を図る。機動捜査隊や自動車警ら隊などの本部執行隊も体制を整理する。
 また、膨大な件数を処理する必要がある交通事故の捜査は、軽微な事故については地域警察官が処理する方法を検討する。業務上過失事件では、捜査に時間がかかる一方で不起訴になる場合も多いことから、形式的で軽微な過失しか認められないケースの処理方法を法務省と協議する。
 この他、リモートでの引き当たり捜査、許可事務への人工知能(AI)導入、地域警察官のウェアラブルカメラ活用、留置管理でのバイタル(生命)情報計測など、先端技術を駆使した業務効率化も進める。車庫証明シールの廃止も検討する。 
〔写真説明〕全国警察本部長会議で訓示する露木康浩警察庁長官=3日午後、東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)