今から50年前に第4次中東戦争を契機として起きた第1次石油危機では、湾岸産油国が原油の大幅値上げや非友好的とみなした国へ輸出制限する「石油の武器化」を講じた。原油をはじめ急激な物価上昇で国内外の経済は大混乱に陥り、日本は反省から石油の備蓄、エネルギー源とその調達先の多様化を進めた。だが、その後は再び中東依存が加速。日本経済のリスク要因となっている。
 1973年10月16日にサウジアラビアなど湾岸産油国は原油価格を約70%引き上げるとともに、17日は敵対するイスラエルを支援する国々への輸出制限を打ち出した。原油価格は最終的に約4倍にまで跳ね上がった。日本はこれを機に有事に備えた石油の備蓄や調達先の多様化などを進め、80年代には石油の対中東依存度は7割を切った。だが、2022年度には95.2%まで上昇した。
 代替の調達先として確保したインドネシアなどが自国の経済成長で日本への輸出余力が縮小。さらに11年の東京電力福島第1原発事故を受けた原発の稼働停止や22年のロシアによるウクライナ侵攻で、脱化石燃料やロシアを含む調達先の多様化にブレーキがかかった。
 石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)は安定供給面で「中東は圧倒的に強く、コスト競争力もある」と依存度上昇の背景を説明。代替調達先の確保は容易ではないとして、「資源外交面で中東との結び付きは極めて重要だ」と強調する。
 こうした状況下、日本政府が「次なる50年を見据えた」(岸田文雄首相)中東諸国との関係強化の切り札とみるのが、各国が進める「脱石油」と経済多角化の取り組みへの協力だ。中東は地理的にも太陽光など再生可能エネルギー活用の潜在能力があるとされ、水素やアンモニアなどクリーンエネルギーの供給拠点としても有望視される。首相は7月にサウジアラビアなど中東3カ国を歴訪し、脱炭素化に向けた技術協力などを確認した。
 もっとも、ここにきてパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を契機とした大規模な武力衝突で、中東が抱える地政学的リスクの根深さが改めて示された。安定的な資源確保は引き続き課題となっている。 
〔写真説明〕白島国家石油備蓄基地=2021年10月23日、北九州市

(ニュース提供元:時事通信社)