従来は考えもしなかったパンデミックが起き、紛争ではなく戦争が現実的に勃発する。企業活動を根本から揺るがしかねないリスクが発生している。こうした状況を受けて、世界の企業経営者は、自社の事業が10年後も存続できているかという「存続リスク」を真剣に考え始めているという。これまでは比較的安泰であることが前提であった中核的な事業も、必ずしも企業の将来を保証してくれるものではないとの認識に基づいて企業経営にあたるべきであると考えようとしている。

このように企業の存続リスクを考えて企業経営にあたるためには、次のようなポイントを考慮することが必要となる。

短期・中期・長期で将来の変化に備える

まず必要となるのは短期、中期、長期という、将来の変化に備えた時間軸上での連続的な対応態勢を整えることである。

短期的には事業運営を見直してコストなどの経営資源の無駄をなくし、迅速に変革に向けて経営資源を効率的に活用できるようにすることである。

中期的には今後数年間の環境変化を検討して事業に与える影響を評価することで、必要に応じて事業の方向性を検討することである。とりわけ、大きな課題としてはエネルギーや原材料の供給といったサプライチェーンでの中期的な傾向、そして顧客行動の変化動向である。前者はウクライナ侵攻での経験から、後者はコロナの影響を受けた顧客の購買行動の変化から、その影響の大きさをすでに学び始めている。さらに、学びを深めることである。

最後に長期的な存続可能性を検討することが必要となる。オフィスなどの物理的な場所はどの程度必要となるのか、AIなどの技術は製品・サービスにどのようなインパクトを与えるのか、地政学的な要因はグローバルなビジネス展開にどう影響してくるかなど、いわゆるPEST分析などを強化すること必要となる。その際には、不確実性への対応であることから、将来の変化を想定したシナリオ・プランニングの重要性が高まることになる。