特種東海製紙三島工場での給油訓練の様子

防災・BCP支援のレジリエンスラボ(神奈川県横浜市、沖山雅彦社長)と損害保険ジャパン(東京都新宿区、白川儀一社長)は11月16日、静岡県東部で、大規模災害時の非常用発電に必要な燃料を地域の企業で補い合う備蓄シェアサービス「BCPチャージ」の共同実証訓練を初めて行った。

平日午前9時に駿河湾を震源とする地震が発生、静岡から関東が揺れに見舞われ、三島市で最大震度6強を観測。市内全域が停電し、復旧の見込みが立たないことから非常用電源への燃料補給の必要性が生じたというシナリオだ。

当日は同サービスの燃料輸送に協力する石油卸の三和エナジー(本社:神奈川県横浜市)が、平塚の拠点から中型タンクローリーで重油を運搬。特種東海製紙三島工場(静岡県長泉町)で模擬給油を行いバルブ操作やホース接続の手順を確認した後、三島中央病院(静岡県三島市)に移動して実際に非常用発電機の燃料タンクに給油した。

燃料シェアの可能性を検討

特種東海製紙三島工場は自社発電施設を所有し、平時から使用電力の約7割を天然ガスで賄っている。ほか、非常用として約700キロリットルの重油の備蓄が可能。商用電力が停まっても約9割の電力を自前で補うことができ、現在も天然ガス発電の点検時や冬期の商用電力ひっ迫時には重油燃料でも発電が可能という。

特種東海製紙三島工場では模擬給油を行いバルブ操作やホース接続の手順を確認

同社は今後、豊富な備蓄燃料を災害時に避難所や病院に届け、地域貢献の役割を果たしたい意向。その可能性を確認するため、今回の訓練に参加した。「当社は、燃料はあるが輸送手段がない。そこを『BCPチャージ』の枠組みでどう補い合えるか、ベストな協働のあり方を検討していきたい」(友竹義明工場長)とする。

三島中央病院では実際に非常用発電機の燃料タンクに給油

一方、三島中央病院は最長3日間の停電を想定し、施設内に2台の非常用発電機を装備。燃料となる重油の備蓄は備蓄場所が限られるうえ、必要となる届け出も変わり、限界があるという。そのため3日以上の停電や季節・時間帯による燃費のロスなど、条件によって備蓄が足りなくなるのが懸案だ。

同病院は今後の対策として備蓄シェアを検討。判断材料を得るうえでの試行的取り組みとして今回の訓練に参加した。「備蓄シェアがどのようなものかを見てみることがねらいで、選択肢の一つとして経営陣に報告する。ただ、周辺道路の被害想定など、今後もいろいろな面から検討が必要」(大久保洋一防災委員会委員長)とする。

相互扶助プラットフォームに

今回の訓練ではタンクローリーの到着から給油完了まで、いずれも20~30分。レジリエンスラボではその間、作業の手順や流れ、動作を確認し、オペレーション上の課題を抽出した。今後は災害発生時の周辺状況のシミュレーション、重要業務継続のための電力・燃料の必要量の算出などを行っていく。

同社沖山雅彦社長は「燃料備蓄にかかるコスト負担やリスクを、企業が単体で引き受けるのはますます難しくなっている」と指摘。全国的な視野で地域企業の相互扶助プラットフォームサービスを展開することで、災害時の被害の最小化や早期復旧に貢献していきたいとしている。