(2)100年に一度の大雨における一日あたりの降水量の増加
全国51地点の1901年から2006年までのデータをもとに、年に一度の日降水量を図3に示す。1001901年から1953年までの統計値と、1954年から2006年までの統計値を比較した場合、180mmまでの地点数が減少し、350mm以上の地点数が増加しており、100年に一度の雨量の増加傾向が認められる。

大雨や集中豪雨の発生頻度の高まりに加え、100年に一度という発生頻度の低い事象が生じた際の降雨量も増加しており、今後、水害の発生頻度・被害の規模ともに大きくなることが想定される。


 http://www.data.kishou.go.jp/climate/riskmap/heavyrain.html

2.梅雨前線の活動による大雨事例


2013年5月21日から6月10日までの降水量は、東京・大阪でともに4.5mmであり、梅雨期としては降水量が非常に少ないといえる。しかし、気象庁が6月7日に発表した1ヶ月予報では、6月22日以降は「北・東・西日本では、梅雨前線の影響で平年と同様に曇りや雨の日が多い」とほぼ平年と同様の天候を予想しており、大雨による災害発生の蓋然性が低下しているとはいえない。

5~6月中は空梅雨であったが、梅雨末期に大雨が続き大きな災害となった事例として、1982年の「長崎大水害」がある。長崎では、梅雨入り後7月上旬まで少雨が続いていたが、7月23日、低気圧と梅雨前線に伴う豪雨により土砂災害及び河川災害が発生した。豪雨は25日まで続き、死者・行方不明者299人、負傷者805人、住家被害38,644棟におよぶ被害が生じた。1982年5~8月までの長崎市における旬間の降水量と平年との比較を図4に示す。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

また、梅雨前線の活動による大雨災害の最近の事例としては、死者・行方不明者35人、負傷者59人、住家被害12,246棟の被害となった「平成21年7月中国・九州北部豪雨」、死者・行方不明者32人、負傷者27人、住家被害14,782棟の被害となった「平成24年7月九州北部豪雨」がある。気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」という表現を初めて使用し注意喚起をした「平成24年7月九州北部豪雨」においては、統計期間が10年以上の観測地点のうち、最大1時間降水量で7地点、最大24時間降水量で8地点が観測史上1位の値を更新するなど、短時間に大量の雨が降る傾向が見られ、前章に示した研究を裏付けるものとなっている。