能登半島地震では、施設に入所していた多くの要介護者らも被災した。災害派遣医療チーム(DMAT)として派遣された名古屋大付属病院救急科長の山本尚範医師は、要介護者らを被災地から搬送した活動を振り返り、2次避難先でのケアを今後の課題に挙げた。
 4~8日に被害の大きかった石川県珠洲市を中心に活動。7日に訪れた介護老人保健施設「美笑苑」(珠洲市)では、入所者100人と近隣のグループホームからの避難者20人の計120人がいた。地震発生後から出勤可能な職員30人で対応していたが、うち数人は1週間自宅に帰れず、睡眠時間を十分に取れないまま介護に当たっていた。
 山本さんは、同施設の職員の一人から「私たちは日本の中から忘れられたのではという怖さで震えていた」と心中を明かされた。
 要介護者らは「災害関連死の潜在的ハイリスクがある」と判断され、山本さんが被災地から引き揚げた11日以降、ヘリで県内外の病院に搬送され、その数は約900人に上った。山本さんは「これだけ多くの要介護者らを被災地の外へ長距離搬送したことはDMAT史上初の試みだった」と話す。
 山本さんは2次避難した要介護者らについて「地縁・血縁から離れた要介護者は今後どのようにして生きていくのか」と強調。医療だけではなく、福祉の支援態勢の強化を訴えた。 
〔写真説明〕災害派遣医療チーム(DMAT)として能登半島地震の被災地に派遣され、現地での活動について話す名古屋大付属病院救急科長の山本尚範医師=25日、東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)