【ワシントン時事】米国内で対イラン強硬論が浮上している。ヨルダンで28日、駐留米軍に対する無人機攻撃で米兵3人が死亡したことで、バイデン政権に軍事行動を求める圧力が強まった。バイデン大統領も報復を明言しており、対応次第では中東情勢のさらなる緊迫化につながる恐れがある。
 バイデン氏は29日、前日に続いて安全保障会議を開催し、今後の対応を協議した。その後、X(旧ツイッター)に投稿し、「われわれの選ぶ時期と方法で、全ての責任者を追及する」と表明した。
 軍事攻撃による米兵の死亡は、昨年10月のイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突開始後初めて。どの勢力が今回の攻撃を行ったかは不明だが、イラクの親イラン武装組織の関与が取り沙汰されている。
 CNNテレビによると、バイデン氏はイラクやシリアの親イラン武装組織に対する報復攻撃、大規模なサイバー攻撃などを検討している。ただ、イラン国内を標的とする可能性は低いという。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は29日の記者会見で「われわれはイランとの戦争を望んでいない」と強調した。
 しかし、野党共和党からは、イランへの軍事行動を求める声が強まっている。同党上院トップのマコネル院内総務は、武装組織だけでなく、イランにも「深刻で破壊的な代償」を払わせるよう要求。同党重鎮のグラム上院議員も「イラン国内の重要な標的を攻撃せよ」と迫った。
 今年11月に米大統領選が迫る中、イランへの対応は選挙戦の争点となる可能性がある。共和党の候補指名が有力なトランプ前大統領はSNSで「バイデン氏の弱さが招いた、恐ろしくも悲劇的な結果だ」と主張。融和的な外交を行っているとして、バイデン氏を非難した。
 シリアやイラクの親イラン武装組織による駐留米軍への攻撃は昨年10月以降で150回以上に達したほか、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で商船攻撃を繰り返している。米軍が限定的な反撃に乗り出しているものの、商船攻撃は止まっていない。 
〔写真説明〕バイデン米大統領=24日、ワシントン(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)