(黒部越湖製造所 提供:YKK AP)

大手建材メーカーのYKK AP(東京都千代田区、魚津彰社長)は、防災から脱却し、BCMの強化に乗り出している。国内外の全拠点でBCPの策定が完了。 次の段階として指針を改訂し、教育や訓練を見直した。 組織横断的に活動できる体制を整え、全社的な展開を促している。 幸いにも、元日に発生した能登半島地震では富山県内にある拠点で大きな被害はなかったが、改善に取り組んでいる

3つのポイント
❶事業継続につながる訓練
・避難にとどまらず、安否確認から被害情報の収集、出荷工程の確認などの訓練を実施。
​❷具体的な対策を学ぶ
・他社が実施している対策を学び、すぐに取り入れて改善に生かす。
​❸組織横断的に活動するための工夫
・活発な議論ができる“場”を設け、全社的な展開の足がかりにする。

能登半島地震での対応

「レジリエントな経営基盤」をマテリアリティ(重要課題)に掲げるYKK AP。最大震度7を記録した元旦の能登半島地震で津波警報が発令された日本海沿岸に、同社の黒部越湖(えっこ)製造所がある。窓用の鍵や戸車、ハンドル、ねじなどを生産している工場だ。この地震で震度5弱の揺れが発生した富山県黒部市内にある3つの拠点のなかで唯一、目の前に日本海が迫る。

同社執行役員でCRO(Chief Riskmanagement Officer)の按田修氏は「年末・年始休暇の最中で工場は稼働していませんでした。唯一、工場内にいた警備員も津波警報の発令により垂直避難で建物の3階に逃れました。他の拠点も含め、この地震で建屋や設備に軽微な被害はありましたが、全体としては製造に大きな影響はありませんでした」と話す。

同社では現地災害対策本部を立ち上げ、1月2日から、細心の注意を払いながら黒部越湖製造所を含む県内4つの製造所と支社の被害情報を確認したという。

全従業員の安否確認は約25時間で完了。年末・年始休暇に入る直前に全従業員に向けて、安否確認情報の再確認を依頼していた。BCP関連の情報を流しているイントラ内のBCMポータルサイトでは、安否確認に関する閲覧数が確実に増えていた。

自社では製造に影響する被害はなかったが、被災したサプライヤーからの供給は停止した。それでも2022年からのBCM強化の一環で資材の調達先を複数に増やしていたために、製造にほぼ影響はないという。被災サプライヤーには、取引先と協力して継続的に支援を実施。水や食べ物、毛布、簡易トイレなどの物資を送り届けている。

BCMポータルサイトの運用や調達先の複数化は、同社が2022年から取り組んでいるBCM強化の一環。従来の災害対策からBCMの強化に着手した理由を按田氏は「自然災害は毎年のように起こり、パンデミックも経験しました。サイバーアタックや地政学リスクの高まりを見ていると、BCMを強化せざるを得なかった」と話す。

防災中心の対策にとどまっていたが、BCMの実践に向けて本格的に動き出していた。