政府は19日に開いた「日ウクライナ経済復興推進会議」で、ロシアによる侵攻が続くウクライナを支援するため、官民合わせて56件の協力文書に署名した。IHIやクボタなど日本企業30社超が、インフラ整備や農業の生産性向上などで協力。侵攻開始から約2年を迎え、各社は技術力を生かして復興を後押しするとともに、戦後も見据えてビジネスの拡大にもつなげたい考えだ。
 「ウクライナの経済復興の原動力は民間セクターだ」。同国のシュミハリ首相は会議でこう述べ、日本企業に積極投資を呼び掛けた。岸田文雄首相も「新たな産業創出でウクライナの経済発展に貢献する」と強調した。
 世界銀行によると、ウクライナの復興に必要な資金は今後10年間で4860億ドル(約72兆9000億円)に上る。特に住居などインフラ関連の比率が高く、シュミハリ首相は「ぜひ高速道路や鉄道、町の再建に参加してほしい」と訴えた。
 これに対し、IHIは建設が容易な仮設橋の設置を支援。住友商事は電気と熱を供給するシステムの近代化に向け協議を進める。三菱電機や富士電機などは地下鉄車両改修で基本合意した。
 国土の約7割を農地が占め、「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれるウクライナ復興には、農業の競争力強化も不可欠。クボタは農業機械を供与、ヤンマーアグリ(岡山市)は作物の生産性向上で協力する。
 IT分野では、楽天グループが地元の通信事業者と通信網の再構築で協業。自動車関連では、双日といすゞ自動車が商用車の供給協力で覚書を締結した。シュミハリ首相は会議で、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、スズキ、マツダ、SUBARUの名前を列挙し、「製造拠点をつくってほしい」とも要請した。
 
 ◇日本企業のウクライナ復興支援
▽IHI         仮設橋設置などインフラ整備
▽住友商事        電気・熱供給システムの近代化
▽三菱電機・富士電機など 地下鉄の車両改修
▽クボタ         農業機械を供与
▽ヤンマーアグリ     農作物の生産性向上
▽楽天グループ      通信網の再構築
▽双日・いすゞ自動車   商用車供給
。 
〔写真説明〕日ウクライナ経済復興推進会議の首脳セッションに出席する岸田文雄首相(右から2人目)とシュミハリ首相(同3人目)=19日午前、東京都千代田区(代表撮影)
〔写真説明〕日ウクライナ経済復興推進会議であいさつするシュミハリ首相=19日午前、東京都千代田区(代表撮影)

(ニュース提供元:時事通信社)