石川県輪島市が今月中旬、能登半島地震の影響でストップしていたふるさと納税返礼品のズワイガニ「加能ガニ」などの出荷を1カ月半ぶりに再開した。廃棄処分も覚悟していた県漁業協同組合の関係者は「おいしい状態で届けることができてうれしい」と喜ぶ。
 輪島港近くにある同市光浦町の水産加工施設では14日、マイナス30度の巨大な冷凍庫に、昨年末に水揚げされた加能ガニやフグの切り身などが入った発泡スチロールが山積みされていた。
 加能ガニは県内の港で水揚げされた、甲羅の幅が9センチ以上の雄のズワイガニで、11~3月が旬のブランド。栄養豊富な日本海で育ったとあって、太い脚や爪に身がぎっしり詰まり、歯ごたえと香り、強い甘みが特長だ。
 ふるさと納税の返礼品としても人気を博してきたが、物流網の寸断などで発送できず、冷凍庫内に眠ったままとなっていた。加工施設で働く磯野春喜さん(66)は「冷凍してから3カ月以上たつと、水気が抜けて身がぱさぱさになってしまう。このままでは廃棄せざるを得ない」と半ば諦めていた。
 ところが16日、市から「出荷を19日に再開する」と連絡が入った。磯野さんは「新たな水揚げができていない中、在庫分だけでも出荷できるようになり大変ありがたい」とほっとした様子。
 ただ、水産加工に欠かせない水は止まったまま。約10人いた従業員も市外に避難している。磯野さんは「完全に休業状態だが、最近は市中心部で少しずつ水が通るようになってきている」と話し、復旧に期待を寄せた。 
〔写真説明〕能登半島地震の影響で出荷できず、冷凍庫内に残ったままのふるさと納税返礼品の「加能ガニ」=14日、石川県輪島市

(ニュース提供元:時事通信社)