ニーズに即した海外リスク情報

(車両に配線される主力製品のワイヤーハーネスを前に)

矢崎総業が情報入手のために採用しているのが共同通信「海外リスク情報」だ。望月氏は「複数のサービスを利用していますが日本語の速報は共同通信だけなので重宝しています。速報をきっかけに安否確認を含めた初動対応の必要性を調べます」と評価する。

インシデントが従業員や拠点に関連する事態かの調査に動き出すには、正確で速い情報が不可欠で、日本語であれば申し分ない。吉岡氏は「速報とはいえ多すぎるのも困ります。インシデント発生後に、数分ごとに進展が届いても見ていられない。共同通信の海外リスク情報は、情報の配信加減がちょうどよく現場にフィットしている」と語る。

堀田氏が「非常に役立つ」と話す利用方法は、海外リスク情報のポータルサイト内での検索だ。

「一般的なWebニュースで表示されるのは、ほとんど現在のニュースだけ。過去の記事が出てこないので、状況の流れを把握するに向いていない。また、新聞やニュースサイトだとどうしても日本人にとって関心の高い情報が中心で、世界的な動向についての情報が必要な我々には向いていない。海外リスク情報のポータルサイトだけが目的に合致している」(堀田氏)

人とのつながりが支える危機管理体制

海外で従業員の安全を確保する取り組みを強化して20年を超えた矢崎総業。組織・体制を創り、危機管理に取り組む「グローバルなコミュニティ」を作り上げてきた。

「叱られることはあれ、ほめられることは少ない仕事ではあるが、実際に現場で顔を合わせて話をして、人とのつながりを感じたときにはやりがいを感じる」と望月氏は話す。

新型コロナの流行は、人の往来を難しくし、コミュニティを支えていた直接のコミュニケーションが取りにくい状況をもたらした。コロナ禍を経ての矢崎総業が直面する課題について吉岡氏はこう語った。

「新型コロナウイルスの影響で対面によるコミュニケーションが途絶えた。海外では人の入れ替わりも激しい。オンラインは便利だが、対面を経験したほうがスムーズにことが運べる。人と人をつなぎなおし、グローバルな危機管理コミュニティのリカバリーに取り組みたい」(吉岡氏)