【ベルリン時事】ドイツ政府が打ち出してきたイスラエルへの支持が、限界に近づいている。パレスチナ自治区ガザの人道状況が改善しないことや、民間人の犠牲が避けられないガザ最南部ラファへの侵攻に傾くイスラエルの強硬姿勢に、閣僚らの批判的な言動が目立ち始めた。「国是」と位置付けるイスラエル支持と、人道重視の理念の板挟みになっている。
 「イスラエルには自衛の権利があるが、身を滅ぼすことにつながるやり方ではいけない」。ベーアボック独外相はイスラエルを訪れた26日の声明で、ガザでの軍事作戦に苦言を呈した。ショルツ独首相も17日、「ラファの150万人もの命が脅かされることはあり得ない」と、ラファ侵攻への反対姿勢を明確にした。
 イスラエルと後ろ盾の米国との溝が深まる中、ドイツだけがイスラエル擁護で突出するのを回避したい思惑もありそうだ。独誌シュピーゲルは、ベーアボック氏のイスラエル訪問が従来のようには歓迎されなかったと指摘し、「亀裂が走っている」と伝えた。
 ただ、ベーアボック氏はイスラエルに寄り添う姿勢もこれまで通り誇示する。イスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃は、テロの連鎖を引き起こすことが狙いだと主張。その上で、イスラエルが強硬姿勢を取り続ければ「私たちもろとも、(ハマスの描いた)テロのシナリオに沈んでしまう」と自制を求めた。
 ドイツは、昨年10月のハマスの襲撃以来、イスラエル軍のガザ侵攻は自衛に当たるとの見解を堅持してきた。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の歴史的な負い目から、「イスラエルの安全に特別な責任を負う」と標ぼうしているためだ。
 しかし、ガザでは民間人の犠牲が膨れ上がり、人道支援も停滞。イスラエルに伴走するドイツに対しては、中米ニカラグアが国際司法裁判所(ICJ)に「イスラエルの虐殺に加担している」と提訴するなど、国際社会からの風当たりが強まっている。 
〔写真説明〕ベーアボック独外相=26日、イスラエル中部テルアビブ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)