中国が、人工的に雨を降らせる「人工降雨」を積極的に活用している。水不足の地域に雨を降らせるケースが多いが、大規模イベントの際に雨雲を取り除くのに使われることもある。2025年には国土の6割近くに当たる550万平方キロメートル以上で実施できるようにする計画だ。
 「良いマラソン日和だった」。湖北省武漢市で3月24日に開催された「武漢マラソン」を完走した30代の男性ランナーは顔をほころばせた。前日時点で大雨も予想されていたが、大会中は雨は降らなかった。省や市は人工降雨の実施の有無を明らかにしていないものの、地元企業関係者は「実施はほぼ間違いない」と断言する。
 中国政府は20年に、農業の振興や森林火災の抑止を目的に人工降雨を活用していく方針を決定した。23年には、技術の向上で「顕著な成果」が得られたと強調。穀倉地帯の東北部では降水量が3割近く増え、新疆ウイグル自治区の綿花畑ではひょうの被害を7割以上減らせたという。
 ただ、人工降雨を巡ってはコストとの兼ね合いなど課題も残っている。中国メディアによると、上海で実施された際は、1回当たり470万元(約1億円)かかった。雨を降らせるために使われる物質であるヨウ化銀には弱い毒性があり、大規模に利用した場合の人体や環境に与える影響は未知数だ。ある地域で雨を降らせたことにより、別の地域が水不足に陥る恐れもある。このため、中国の取り組みを「壮大な社会実験」(北京の日系メーカー関係者)と評する向きもある。 
〔写真説明〕「武漢マラソン」当日の様子。開催中に雨が降らなかった=24日、中国湖北省武漢市

(ニュース提供元:時事通信社)