2018/08/31
直言居士-ちょくげんこじ
ICTの進展により、年々重要性が増し続けるデータセンター。集中する企業の所在同様、63%は首都圏に置かれている。株式会社データドックの宇佐美浩一社長はBCP(事業継続計画)の面からも現状を疑問視。災害対策と省エネの観点から新潟県長岡市でデータセンター事業を展開する。
「AI(人工知能)やブロックチェーンの進展などでデータセンターの需要は増している。さらにはセキュリティや省エネ性能など顧客の要望が上がっている」と宇佐美社長は現状を分析。一方で富士キメラ総研の調べによると、国内データセンターの51%が耐荷重性の低い築20年以上。さらに65%はラックの消費電力が2kVA以下で多くのデータを扱いづらい。さらには首都圏に6割近くが集中していることもあり、「データセンターは課題が多いと感じ参入しようと考えた」と宇佐美社長は振り返る。そして2016年に親会社でネット広告事業を手がけるメディックスの新規事業として会社を設立した。
「首都圏と西日本は首都直下地震と南海トラフ地震の懸念がある。自家発電にせよ燃料が必要で、道路が寸断の恐れがある所を避けたかったのと、リスク軽減のためにもデータセンターの地方分散が必要だと感じていた」と最初からデータセンターの設置先として首都圏を外した宇佐美社長。海外については「コストを下げることはできるが、日本と法制度が違いデータ差し押さえといったリスクがある」として避けた。
そして決めた設立先は長岡市。理由としては新潟県が首都圏で事業継続セミナーを実施するなど当時の知事が誘致に熱心だったこと、首都直下地震や南海トラフ地震の影響を避けられること、上越新幹線や関越自動車道など首都圏との交通網が充実していること、さらには積雪が多く、冬の雪を保存・活用し不凍液を通じた熱交換方式で夏に冷房を行える。これにより首都圏のデータセンターと比較し38%のコスト削減につながるという。
新潟県というと2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震といった、地震が多いイメージを持たれがちだが、宇佐美社長は「データセンターのある場所は地盤が強固。活断層からも外れ液状化の心配もない」と評価。今年1月に稼働した延床面積約5400m2のデータセンターは免震構造2階建て。ハザードマップも参考に2.5mの防水壁や建物内に72時間稼働するガスタービン発電も設置した。災害対策以外にも監視カメラや管理センターのほか、入場への2要素認証といった防犯やDDos攻撃対策などサイバーセキュリティ対策も取っている。
ラックあたりの電力は30kVA、床耐荷重はm2あたり3t。東京とはメインとバックアップ回線をいずれも100Gbpsで、大阪とは10Gbps回線でつなぐ。日本データセンター協会のファシリティスタンダードの最高ランクのティア4を獲得している。電気代などコストの削減から、宇佐美社長は「首都圏のデータセンターと比較し、競争力のある価格設定としている」と説明。更なる顧客獲得を目指しているほか、2020年度には2期として現在の3倍の延床面積のデータセンター開設の予定となっている。災害リスクとコスト低減で、地方から大都市の事業継続を支えていく。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
- つながり支援や企業連携で災害対策強化
- 地方データセンターで災害対策と省エネ
- 災害リスクに対抗、クラウドで事業継続
- 中小企業向けに低価格「海外危機対策プラン」を開発
- 防災活動をドローンでより安全に
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
-
-
能登半島地震における企業の対応レジリエンスの実現に向けて
能登半島地震で企業の防災・BCPの何が機能し、何が機能しなかったのか。突きつけられた課題は何か。復興に向けどのような視点が求められるのか。能登で起きたことを検証し、教訓を今後のレジリエンスに生かすため、リスク対策.comがこの2カ月の取材から企業の対応を整理しました。2024年3月11日開催。
2024/03/12
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月12日配信アーカイブ】
【3月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:東日本大震災 企業のハンズオン支援
2024/03/12
-
-
-
能登の復興は日本のこれからを問いかける
半島奥地、地すべり地、過疎高齢化などの条件が、能登半島地震の被害を拡大したとされています。しかし、そもそも日本の生活基盤は地域の地形と風土の上に築かれ、その基盤が過疎高齢化で揺らいでいるのは全国共通。金沢大学准教授で石川県防災会議震災対策部会委員を務める青木賢人氏に、被害に影響を与えた能登の特性と今後の復興について聞きました。
2024/03/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方