WGの報告を受け、山本防災担当相(手前左から2人目)は自治体や企業向けのガイドラインを早期に提示する方針を語った

内閣府を中心とした政府の中央防災会議は11日、「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応ワーキンググループ(WG)」の第7回会合を開催。南海トラフ沿いで地震など最初の異常が起こった場合の対応について報告書のとりまとめを行った。M(マグニチュード)8以上の地震が起こった際は、被害がなかったエリアでも続く地震に備えて津波の危険のあるエリアから1週間避難することなど、最大2週間程度の警戒を呼びかけ。企業に対しても被害軽減への対応を推奨している。

南海トラフ沿いでの異常については(1)「半割れ」と言われるM8以上の地震(2)「一部割れ」と言われるM7以上8未満の地震(3)「ゆっくりすべり」と言われるプレート境界面ですべりがあり、ひずみが計測できる―の3つのケースに分類した。

「半割れ」の場合、被災地域の支援活動を行いつつ、後発地震で被害が出る恐れのあるエリアについても対応を行う必要がある。報告書ではできる限り日常生活や企業活動を維持しつつも、必要な対応として、津波の被害が見込まれる沿岸地域の住民のうち、後発地震後の避難では明らかに間に合わない住民や避難に時間がかかる要配慮者については、最初の地震発生後に避難するべきだとした。避難を検討すべき対象地域は津波で30cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域を基本とする。

「半割れ」での後発地震に備えた企業の防災対応については、出火防止など施設の安全措置や従業員の避難などのほか、事前のデータのバックアップなどの対応を呼びかけ。一時的に企業活動が低下しても、万が一後発地震が起こった際に早期復旧できる備えをとるべきだとした。

「一部割れ」「ゆっくりすべり」の場合は新たな地震に備え警戒レベルを上げ、特に「一部割れ」の場合は必要に応じ住民は自主的な避難も実施し、企業もデータのバックアップなどで備えておくべきだとした。また異常があってから1週間は特に警戒すべき期間に設定。「半割れ」では津波など危険の高いエリアの住民は1週間避難し、さらに1週間は警戒すべき期間としている。さらに平時からの取り組みとして、建物の耐震化や備蓄などのほか、企業にはBCP(事業継続計画)の策定も呼びかけている。

報告書を基に、政府では地方自治体や企業が検討に着手し、具体的な防災対応を実施できるよう参考になるガイドラインを今後とりまとめる。会議の最後に山本順三・防災担当大臣は「WGで委員の知見をいただき、報告に至ったことはうれしい。ガイドラインを早期に提示したい」と挨拶した。

WG主査の福和伸夫・名古屋大学教授は会議後に報道陣の取材に応じ、「今回の報告はあくまで大きな方向性。ガイドラインを作る過程で、各省庁や各地域の人々と具体的な話を行う必要がある。そしてガイドラインができれば、自治体が(対応を)具体化させることになる」と述べた。ガイドライン策定の時期については「数カ月ぐらいで作らないといけない」とした。また「活動が止まると社会的影響が大きい企業などは、機能を維持する取り組みが事前から必要だ。平時から防災対策を向上させほしい」とした。

「半割れ」はこれまで103事例あり、M8クラスの後発地震が7日以内に起こったのはそのうち7事例。福和主査はこのデータをふまえ、「(大きな後発地震が起こらない)空振りはあるだろう。それでも大きな地震が起こりうる10分の1の確率に備えて情報を活用することで被害を減らせることができる」と述べた。また、「『半割れ』の場合、被害を受けた地域の支援が優先される。それ以外の地域への支援は限られるので、住民や自治体・企業でできるだけやっていかねばならない」とし、地域での自主的な取り組みの重要性を語った。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介