多くの企業や病院・施設などでは、従業員や利用者、さらには帰宅困難者向けに、必要となる水、食料、毛布などを備蓄しています。これらは、施設内の備蓄倉庫に保管されている例が多いのではないでしょうか。今回は、備蓄は何のために行うか、どの場面で使用するのか、備蓄倉庫の必要性などについて、検討していきます。

編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2014年9月25日号(Vol.45)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月31日)

1 東京都帰宅困難者対策条例の施行 
2013年4月、東京都帰宅困難者対策条例が施行され、事業者には、従業員や来社中の顧客・取引先など帰宅困難者のために、1日あたり3リットルの水と3食分の食料を3日1人分、毛布を従業員プラス10%程度の量の備蓄に加え、簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等)、燃料(非常用発電機のための燃料等)などの必要量を備蓄することが求められています。 

さらに、配布作業の軽減や個人の防災意識の向上等の視点から、事前に備蓄品を従業員へ配布しておく方法を検討することも必要です。
(参考)事業所における帰宅困難者対策ガイドラインhttp://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/kitaku/pdf/guideline01.pdf


2 備蓄は、何にために行うのか 
大震災が発生すると、電気、通信、上下水道や都市ガスが使用できなくなり、公共交通機関の運行停止、主要幹線道路の緊急車両以外の通行禁止などの措置が行われます。そして、平常時とは異なり、停電により照明や空調が止まり、トイレの使用禁止やエレベータの停止とともに、必要な物資が入手できなくなります。 

このような事態にあっても、平常時の業務について、直ちに実施しなければならないライフライン事業者、病院、行政などでは、「業務遂行上」不可欠な資器材、機器類、燃料などとともに、業務に従事する従業員の水や食料等を備蓄しています。さらに、震災後速やかに業務が遂行できるよう、BCP等が策定され、備蓄品の計画的な見直しも行われています。 

一方、震災後、業務を中断できる企業においては、従業員、来客者や帰宅困難者などの施設内待機を目的とした「一時待機用」の水や食料等を備蓄していますが、使用場面と備蓄品目や数量などが不明確になっていないでしょうか。以下、そのポイントを示します。

3 備蓄品は、どのような場面で使用するのか 
勤務時間中に地震が発生した場合、まず、すべきことは自身の安全の確保です。机の脇にある「ヘルメット」を着用します。次に、来客者と従業員の安否確認で、さらに、火災発生の有無、エレベータ内の閉じ込め確認、負傷者への対応を行います。 

その後、建物内外の被害状況を確認し、建物内に留まることとなります。ここまでに必要な備蓄品は、「消火器」と各フロアにある「救急箱」で、救急箱内の包帯、消毒薬、鎮痛薬などは定期的に点検しておきましょう。 

建物内に留まると決定した後は、「ラジオ」で情報を収集し、地震で雑然とした室内を「ほうき」「ちり取り」やで清掃を行い、「ゴミ袋」に収納し、必要に応じ「立入禁止のテープ」を貼り、留まる部屋を決めます。また、負傷者対応専用スペースや男女別の宿泊スペースとともに、来客者や帰宅困難者用のスペースを確保します。 

停電で暗い部屋にはフロアの書庫にある「ランタン」や「懐中電灯」で明るくし、「携帯用トイレ」をトイレ内に設置し、使用方法を掲示し、「トイレットペーパー」や汚物を入れる「蓋付きのポリバケツ」を用意します。さらに、トイレや給湯室などの上下水道の使用禁止の掲示をします。 

数時間後から日没までの間に、「飲料水(500mlのペットボトル)」と「食料」を自席から取り出し、会議室の保管している宿泊用の「毛布など」も準備します。携帯電話の充電が必要となり、「発電機と燃料」は安全性も考え備蓄庫から出します。 

翌日、明るくなったら滞在者や交通事情等を考慮し、帰宅しようとする人に、フロアの書庫から「飲料水」「食料」とを配ります。なお、帰宅する人には「自己責任で帰宅する」旨の文書を提出してもらうようにします。 

これは、地震後の行動の一例ですが、時系列に沿って必要な備蓄品と備蓄場所を示しています。特に、備蓄品は使用する場所の近くに置いてあることが重要で、とりわけ地震直後に頭部を守るヘルメットは、別室の備蓄庫にあっても宝の持ち腐れとなります。

4 備蓄数量の考え方 
では、「飲料水」「食料」との備蓄量は、どのようにして決めるのでしょうか。ここでは、業務に従事する従業員用でなく、単に職場内待機する人の必要量を考えてみます。 

従業員100人と来客者や帰宅困難者が10人と仮定した場合、当日の午前中に地震が発生したら、110人×2食分、午後は1食分で足ります。翌日に約半数が帰宅したとすると、55人×3食分。翌々日は8割強が帰宅すると20人×3食分でいい計算になります。 

これは一例です。各事業者の職場内待機者数の変化に応じ、現実的な必要数を算定してみてください。